宅建士のまなざしから

【中編】空き家の未来を「京都から」考える。宅建士として、父として、地域に暮らす人として

「空き家」って聞くと、なんとなく地方の山奥にある廃墟を思い浮かべる人が多いかもしれません。でも今、その“空き家”は、もっと身近な場所──たとえば京都市の住宅街や郊外のベッドタウン──にも、静かに、確実に広がってきています。

僕は京都で店舗デザインの仕事をしている45歳。宅建士でもあり、三人の子ども(上二人はサッカー、末っ子はダンス)と妻と一軒家に暮らしています。近所には親世代の家も多く、最近は「家を売ってマンションに移る」という話もよく聞くようになりました。仕事では毎日空き家の現場に触れ、暮らしのなかでもそのリアルを感じる日々です。

空き家は「どこか遠くの問題」じゃない

NHKの特集「2040年 空き家数全国予測マップ」によれば、2040年には全国の空き家数は今の2倍、約712万戸になるといわれています。京都市でも伏見区、右京区、左京区、宇治市といったエリアで空き家数が1万戸を超えると予測されています。

これまで「空き家=田舎の話」と思っていた人も、もう他人事ではない。人気のエリアであっても、同時期に開発された住宅地では、住民の高齢化とともに空き家が一気に増える構造が見えています。僕のまわりでも「相続したけど、どうしていいか分からずに放置してる」という声をよく聞くようになりました。

京都ならではの空き家事情

ただ、京都の空き家はちょっと特殊です。町家が多く、景観条例や文化財の指定など、いわば「簡単に壊して建て直せない家」が多い。だからこそ、空き家になってもすぐ売ったり貸したりしづらいんです。

でもそれは裏を返せば、「活かしがいのある空き家」でもあるということ。観光や移住のニーズが高い京都では、町家を宿泊施設やカフェ、アトリエに再生する例も少なくありません。実際、僕の知人が所有していた町家は、宅建士として僕が間に入って、今では地元のパン屋さんとして使われています。

「空き家、活用したい」けど…動けない理由

多くの人が「空き家を活用したい」「なんとかしたい」と思っている。でも実際に動ける人は少ない。それには理由があります。

相続手続きがややこしい

費用がどれくらいかかるのか不安

相談できる相手がいない

地元を離れて住んでいるので状況がわからない

こうした悩みは、僕自身も現場で何度も聞いてきました。特に、相続から時間が経てば経つほど、誰も手をつけられなくなっていく。この“なんとなく放置”される空き家が、街の魅力や治安をじわじわと蝕んでいくんです。

空き家マッチングという選択肢

だから今、注目したいのが「空き家マッチング」という新しい選択肢です。たとえば、僕らが関わっているakimii(アキミー)というサービスでは、空き家オーナーが登録するだけで、宅建士が具体的な活用提案を届ける仕組みがあります。

売る・貸す・リノベして使う──その前段階として「提案を受けてみる」。そんなラフな関わり方ができるから、動けなかった人が一歩踏み出せる。これは“場所”をどうするかだけじゃなく、“人”をどうつなぐかという話だと思っています。

後編へつづく

次回は、海外の空き家活用事例や、京都という都市が持つポテンシャル、そしてこれから空き家とどう向き合っていけるのか──僕自身のエピソードも交えながら、もう少し深掘りしてみたいと思います。

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