京都の空き家事情と制度解説

京都に導入される空き家税と、これからの暮らしの向き合い方

2025年5月17日

ある知らせに、少し背筋が伸びた

先日、「京都で空き家税が始まるらしいですね」と、知人から何気なく話しかけられた。
そのときは、ふんわりとしか内容を知らなかったのだけれど、後でちゃんと調べてみたら、なかなか奥深い話だった。

正式には「非居住住宅利活用促進税」と言うらしい。
名前は少し堅いけれど、要は「人が住んでいない家に対して、京都市が新しく導入する税金」のこと。

私たちのように、暮らしの中に空き家と向き合う仕事をしている者にとって、この動きはとても大きな意味を持っている。
だから今回は、この「京都の空き家税」のことを、できるだけやさしい言葉で、感じたことと一緒に伝えてみたいと思っている。

なぜこの税金が始まるのか

京都には、住みたいと願う人がたくさんいる。
学生、若い夫婦、移住を考えている人、そして古い家が好きな人たち。
でも一方で、使われずに放置されている家もまた、たくさんある。

例えば別荘として買ったけれど、もう何年も足を運べていない家。
親から相続したけれど、どう扱えばいいかわからない実家。
そんな「非居住住宅」が、街のなかで少しずつ、だけど確実に増えてきている。

そうなると、防災の面でも、防犯の面でも心配が増えてくる。
人の気配がない場所が増えると、まち全体の元気も、少しずつ削がれてしまう気がする。

そうした背景から、京都市が「空き家や使っていない家を、もっと有効に使ってもらう」ために、この新しい税金を始めることにしたというわけらしい。

この税金が目指しているもの

税金というと、どうしても「お金を取られるもの」と思ってしまいがちだけれど、
この「非居住住宅利活用促進税」は、少し違った目的を持っている。

・空き家をうまく活用できるようにすること
・住宅の供給をふやして、住みやすいまちにしていくこと
・安全で安心な暮らしを守ること
・地域の元気を保つこと
・将来にかかる空き家対策の費用を、減らしていくこと

つまり、「まちの未来を整えていくための、準備のようなもの」なのかもしれない。
この考え方には、私も共感する部分がある。

税金がかかる人、かからない人

この税金が対象になるのは、京都市の市街化区域にある「非居住住宅」の所有者。
簡単に言えば、誰も住んでいない家を持っている人のこと

「住民票はあるけど、実際には他の場所に暮らしている」ような場合でも、
使われていなければ税金の対象になる
ことがあるという。
これには少し驚かされた。

けれど、すべての非居住住宅に一律で課税されるわけではなく、ちゃんと例外や配慮もある。

たとえば、

  1. 家の評価額が一定以下なら税金がかからない
  2. 近いうちに貸したり売ったりする予定があるときは免除される
  3. 病気や入院、災害、介護施設に入っているといった事情があるときは減額されることもある
  4. 海外赴任や転勤中でも、5年以内なら対象外になる
  5. 増改築やリフォーム中も配慮がある

さらには、所有者が亡くなった場合など、税金の支払いを3年間待ってもらえる制度もある。
こういった柔軟な対応が用意されていることに、少しほっとした。

実際、いくらかかるのか

税金の金額は、家の「価値」や「立地」によって決まる。
計算のしかたは少し複雑だけれど、ざっくり言うと、

「家屋価値割」…建物の評価額に0.7%をかける
「立地床面積割」…土地の価値 × 建物の床面積に、場所に応じた税率をかける

場所によっては、そこそこの額になる可能性もある。
でもこれは、「ちゃんと活用されていれば払わなくてもいいお金」とも言える。

そう考えると、「空き家とどう向き合うか」が、これまで以上に問われる時代がやってきたのかもしれない。

私の正直な気持ち

私はこれまで、いろんな空き家と出会ってきた。
ボロボロに朽ちかけた家もあれば、まるで時間が止まったかのように整った家もあった。
共通していたのは、その場所に「何かがあった」こと。

人が暮らし、思い出が刻まれた時間。
その余韻が、どんな空き家にも、ちゃんと残っていた。

空き家税という仕組みが生まれることで、
たしかに所有者にとっては、重たく感じることもあると思う。
でも一方で、空き家が「放置されるもの」ではなく、「誰かの手に渡る可能性のあるもの」として、再び光を浴びるきっかけにもなるかもしれない。

京都だからこそ、できること

京都という町には、歴史がある。
だからこそ、古いものを「捨てる」のではなく、「つなぐ」文化が根づいている。

空き家に税金がかかるからといって、すぐに解体してしまうのではなく、
それを“住み継ぐ”ための工夫や仕組みを、私たちはもっと考えていける気がしている。

この税金は、ただの負担ではなく、
まちと人とが、もう一度ゆっくり関係を結び直すための「問いかけ」なのかもしれない。

そして、私たちakimiiも、そんな問いかけに向き合いながら、
この町で、次の世代につなぐ暮らしのかたちを、一緒に探していけたらと思っている。

※本記事では「京都」「空き家税」に関する最新の制度をもとに構成しました。制度の詳細や変更については京都市の公式発表をご確認ください。
参照:京都市:非居住住宅利活用促進税について<令和11年度課税開始予定> : https://www.city.kyoto.lg.jp/gyozai/page/0000296672.html

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