京都の空き家事情と制度解説 京都の空き家物件とリアルな現場レポ

放置は危険!京都の空き家を適切に管理しないとどうなる?リスクと対策

2025年6月8日

はじめに:お彼岸に交わされた、あの一言

先日、親戚一同でお墓参りをしたあと、久しぶりに顔をそろえて昼ごはんを食べたんです。こういう機会って、普段は話さないようなことまでポロッと出たりするもんで。

親戚のおばさんが、ぽつりとこんな話をしました。

「この前、友達の家に換気しに行ったら、床が抜けててん。え?て思ったけど、ほんまにズボッてなってもうて…」

みんな「うわ〜」「こわ〜」とざわつく中で、僕はその家の姿を思い浮かべながら、他人事やないなぁと思いました。

京都には、そういう空き家が増えてきています。屋根が波打ってたり、軒が下がっていたり、見ただけで「この家、だいぶ長いこと使ってないな」と感じることも少なくありません。

今日はそんな「空き家を放置することのリスク」について、実際の会話や現場での実感を交えて、京都の現状と対策を一緒に考えていけたらと思います。

1. 見た目以上に危険──老朽化と倒壊のリスク

さきほどの「床が抜けた」話、じつはそんなに珍しいことではありません。木造の家は、人が住んでいないだけで、空気の流れが止まり、湿気がたまり、どんどん劣化が進みます。

京都のように夏は蒸し暑く、冬は底冷えする気候だと、余計に影響が出やすいんです。外観はそこそこきれいでも、床下の束柱や梁が腐っていたり、シロアリの巣になっていたりということも。

「見た目は大丈夫やと思ってたけど、中入ったらもう…」というケース、現場では何度も見てきました。

特に注意したいのは、屋根の傾き。外から見て「ちょっと傾いてる?」と感じる家は、すでに重心バランスが崩れていて、瓦がずれていたり、雨漏りが起きている可能性があります。

そのまま放置すると、台風や大雨の際に瓦が飛んだり、軒が崩れたりする危険性も。

「うちの実家もそうかも…」と思った方は、できるだけ早めに専門家に見てもらうことをおすすめします。

1.2不法侵入・火災・景観の悪化──近隣トラブルの連鎖

空き家を放置すると、建物の劣化だけでなく、周囲との関係にも影響が出てきます。

たとえば、不法侵入。誰も住んでいない家は、夜になると明かりもなく、泥棒や浮浪者にとっては格好の“隠れ場所”になりがちです。

近所の方が「誰か入ってたみたい」と気づいて警察に通報するようなケースも増えていますし、最悪の場合、不審火による火災にもつながることがあります。

京都の町家や昔ながらの住宅街は、家同士が密接していることが多く、ひとつの家の火災が近隣に広がる可能性も高い。

さらに、草木が生い茂ったり、ポストがチラシで溢れていたりするだけでも、「あそこの家、放置されてるな」という印象を与え、地域全体の景観や価値が下がってしまうこともあるんです。

これは、ただの空き家の問題ではなく、まち全体の問題でもあります。

1.3「特定空き家」に指定されるとどうなる?

京都市では、景観や安全性を守るため、一定の基準を満たす放置空き家を「特定空き家」として指定する制度があります。

これは、行政が調査の上で「このままでは危険だ」と判断した場合に適用されるもので、所有者に対して改善の指導や勧告が行われます。

そのまま放置し続けると、以下のような措置が取られることもあります:

  • 行政による強制的な修繕または解体
  • 修繕・解体費用の請求
  • 固定資産税の優遇措置(住宅用地特例)の解除

つまり、「住んでなくてもそのままにしておける」という考えは、すでに通用しなくなってきているんです。

しかも、この指定を受けると周囲にも知られることになり、「あそこの家、行政から勧告受けたらしいよ」という評判が立ち、売却や活用のハードルも上がってしまうことに。

2.空き家放置が招くリスクとは?見えない問題の正体

それでは空き家を放置しておくことでじわじわと忍び寄る“見えない問題”について、お話していきたいと思います。

よく言われるのが「放っておいたら壊れる」という物理的な老朽化。これは言わずもがなですが、実際にはもっと複雑で根の深い問題が空き家には潜んでいます。

たとえば、

不法侵入や不審火のリスク。

害獣や害虫の住処になる危険性。

地盤沈下や雨漏りからの構造劣化

そして何よりも、地域の景観や治安に影響するということ。

「うちはそんな立地じゃないから大丈夫やろ」「近所に迷惑なんかかけてへんと思う」と言う方もいらっしゃいますが、実は誰にも見られていないからこそ“勝手に”使われてしまうこともあるのです。

2.1 不法侵入とゴミの不法投棄

実際、私が相談を受けた京都市北区の案件では、長年空き家になっていた家の庭に、誰かがゴミを勝手に捨てに来ていたという話がありました。最初は植木鉢程度だったのが、次第に粗大ゴミ、果ては家電製品まで持ち込まれて……気づいたときにはちょっとした“野外ごみステーション”になっていたんです。

住んでいない家、管理されていない家って、見ればすぐにわかる。人の気配がない。ポストがあふれてる。庭の草が伸び放題。たとえばそんな状況が続けば、「ここは誰も気にしてへんのやな」と思われても仕方がないんです。

これが一度発生すると、近隣の人からの目も変わってきます。「あの家どうするんやろ」「夜になるとちょっと怖いな」──そう思われ始めると、空き家は“地域の問題”へと変わってしまうのです。

2.2 空き家が地域の価値を下げてしまう?

空き家があるだけで、近所の土地価格に影響を及ぼすことがある……というと驚かれるかもしれません。けれど不動産の世界では「街並み」や「治安」といったソフト面の印象も、売却価格や資産価値に大きく関わります。

とある京都市中京区の町家では、周囲が手入れされた住宅ばかりのなかにポツンと一軒だけ放置された空き家がありました。屋根は傾き、木戸は歪み、雨の日には前の道路に雨水が溢れる状態。結局、その空き家の隣の家が売りに出されたとき、「隣が危ない家やからなあ」と買い手が難航した、という話も実際にありました。

空き家一軒が地域の不動産流通全体に影響を与える。これはちょっと極端な例ではあるかもしれませんが、こうした“負の連鎖”は見逃せません。

2.3 特定空き家に指定されたらどうなるの?

そして、もっとも重たいリスクが「特定空き家」に指定されることです。

2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」によって、倒壊などの危険がある空き家や、著しく景観を損なうと判断された空き家は、行政によって「特定空き家」に指定される可能性があります。

この指定を受けると、

  • 行政から指導・勧告・命令を受ける
  • 固定資産税の住宅用地特例(1/6課税)が適用除外になる
  • 最終的には行政代執行による解体処分も

などの措置が取られることになります。

「え、でもそれってかなり危ない家だけでしょ?」と思われるかもしれませんが、京都のように景観や文化保全に厳しい都市では、比較的早い段階で是正を求められることもあります。

たとえば、町家の意匠が壊れていたり、通りから見える形で木が伸び放題になっていたり……“暮らしていない”ということがそのまま“管理していない”と見なされる。

「ついつい気にはなってるけど行けてなくて……」では済まされない時代に、もう入ってきているのかもしれません。

3. 空き家を守るためにできること 〜放置せず、未来へつなぐ選択肢〜

「気づいたら床が抜けてた」なんて話、他人事のようで、実はすぐそばにある話です。空き家が急に老朽化するわけじゃなくて、何年も、何十年もかけて、静かに進んでいくものなんです。けれど、その変化に気づけないままに、ある日ドンと問題が表面化する。前の章で書いた“特定空き家”の指定や税金の話もそうですが、実際には「気づいたときには手遅れ」になってしまうケースが本当に多いです。

だからこそ、ここからは“手遅れになる前にできること”を、いくつかの視点から整理してみたいと思います。

3.1 定期的な管理で「空き家」を「家」に戻す

まず、一番大切なのは「空き家を放置しないこと」。これは本当にシンプルで、だけど難しい。

京都のような地域では、ご先祖様の家だったり、親が長年住んでいたりと、家に対する思い入れが強いことが多いです。だからこそ、壊す決断ができなかったり、誰も住んでいないのにそのまま残しておきたいという気持ちもよくわかります。

けれど「残しておく」というのは、「そのままにしておく」ことではなくて、「手を入れ続ける」ということだと思います。月に1回でも構いません。換気をする、雨漏りがないか確認する、庭の草を刈る。それだけでも、家はちゃんと生きてくれるんです。

僕の知人で、四条の近くにある築80年の町家を、ずっと空き家のままにしていた方がいました。仕事で忙しくて、なかなか通えなかった。でも、あるとき思い切って「月1回だけ管理に通う」と決めたそうです。それからというもの、空き家独特のカビ臭さも薄れ、風通しも良くなり、結果的にはその町家をリノベして貸し出すことになりました。

放置していたら、おそらく今ごろ取り壊しになっていたはず。そう考えると、「通う」「気にかける」ことの価値って、ほんまに大きいなと思います。

3.2 地元の人とつながることで守れるものがある

そしてもう一つ、空き家を維持するうえで忘れてはいけないのが

「人とのつながり」

です。たとえば、近くに住んでいる親戚や、信頼できるご近所さんに「定期的に見ておいてもらえるか」と相談してみる。

あるいは、空き家の管理を代行してくれる地元のNPOや自治体のサポートを利用する。京都市では「地域の空き家サポーター」制度など、住民と連携した管理支援の取り組みが少しずつ増えています。

「管理会社に任せる」という発想ももちろん大切ですが、それ以上に“ご近所の目”って実は強力です。郵便物が溜まってないか、誰かが不法に出入りしてないか──そういう小さな変化に気づけるのは、日々の暮らしの中でその場所を見ている人たちなんですよね。

そしてなにより、そういう人とつながっておくことで、「空き家を活用したい」と思ったときに頼れる味方になってくれることもあります。

3.3 活用という選択肢を、もう一度考える

「壊すにはもったいない」

「残したいけど、どうしていいか分からない」

──そう思っている方に、あらためて伝えたいことがあります。

活用するということは、決して大げさなリノベーションをすることではなくて、「誰かがここで暮らす、あるいは使う状態に戻す」ということです。

カフェや民泊、アトリエ、子ども食堂、あるいは地域の集会所など。最近では「京都の町家を舞台に、地域に開かれた場所をつくりたい」という若い人たちが増えてきました。移住者やUターン者の中にも「昔ながらの町並みを大切にしたい」と考えて、空き家活用に前向きな人が多い印象です。

もちろん、活用には手間も費用もかかります。けれど「家を残す」「次の世代につなぐ」ためには、やっぱり誰かの手が入らないといけないんですね。

空き家は「荷物」ではなく「可能性」だと思います。今はまだ見えていないけど、誰かの人生を動かすような出会いや、新しい価値がそこに眠っているかもしれません。


空き家を放置することのリスク。そして、そこから守るためにできること。ここまでお読みいただいた方には、「ちょっと動いてみようかな」と思ってもらえていたら嬉しいです。

誰かが動かないと、家は生き返りません。けれど、たった一歩でも踏み出せば、不思議と物事は回り出すものです。

僕たちakimiiも、その一歩のお手伝いができればと思っています。どんな状態でもかまいません。「ちょっと気になってるんです」と、気軽に声をかけてください。

未来の誰かの居場所になるように──空き家を、もう一度動かしていきましょう。

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