
祇園囃子にふと立ち止まり、空き家に目がいく
7月に入って、京都のまちは一気に祇園祭の空気に包まれてきました。
山鉾の準備が始まると、にわかに日常が非日常に染まっていく感じがして、子どもみたいに少しソワソワしてしまいます。
会社の周りでも、昼休みにふらっと歩くだけで、山鉾町のあたりは笛や太鼓の音がそこかしこから聞こえてくる。そんななか、仕事柄なのか「ここ、空いてんな」「ここも、もったいないな」とつい建物に目がいってしまいます。
祇園祭のこの時期は、例年、観光の方も多くて、まちの賑わいが戻ってくる反面、通りに並ぶ町家やテナントが前よりもぽつぽつと空いていることに気づく。
「昔からこの店、やってたよな…」と思い出す場所が、シャッターを閉めたままになっていて、時の流れに少し胸が締めつけられることもあります。
でも、そういう空き家や空きテナントにこそ、可能性が眠っていると思っています。
その場所を残したい。何かに使えないか。けれど自分だけでは手に負えない。
そんな思いを抱えている人にとって、「空き家管理の委託」という選択肢は、ひとつの安心材料になるかもしれません。
空き家をそのままにしておくとどうなる?
そもそも「空き家管理」とは何か?
「空き家」と聞くと、「売るか貸すかしないとダメなのかな」と思われがちですが、今は“持ち続ける”という選択肢も広がってきています。
ただ、誰も住んでいない家は、放っておくとあっという間に劣化していきます。
たとえば以下のようなリスクがあります。
- 換気されずに湿気がこもり、カビや腐食が進む
- 雨漏りや害虫の発生に気づかず、劣化が加速する
- ゴミや雑草が近隣から苦情につながる
- 窓ガラスの破損や不法侵入など、犯罪リスクが高まる
- 特定空き家に指定されることで固定資産税が高額に
特に京都のような町家が多い地域では、木造建築ならではの湿気対策が重要で、通風や雨漏りチェック、庭の手入れなどは欠かせません。
「何年も誰も入ってないうちに、床が抜けてた」
なんて話も、わりと聞くようになりました。
専門業者による「空き家管理サービス」とは?

そんなリスクを減らすために、最近増えてきているのが「空き家管理サービス」です。
主なサービス内容としては、以下のようなものが一般的です。
- 通風・換気(窓を開けて空気を入れ替える)
- 室内の簡易清掃
- 雨漏りや破損の有無を点検
- 郵便物の整理やポスト清掃
- 外観(庭、雑草、ゴミ)のチェック・清掃
- 写真付き報告書の送付
これらを月に1回〜2回のペースで定期的に実施し、所有者に報告するという仕組み。
実際に現地へ出向く手間を省きながら、遠方に住んでいても空き家の状況を把握することができるのです。
「仕事が忙しくて行けないけど、気になってる」
「実家が京都にあるけど、今は東京暮らしで…」
そんな方にとっては、専門家に任せることで得られる“安心感”が、思った以上に大きいものです。
専門業者に空き家管理を依頼する費用の目安は?
さて、「じゃあ実際、いくらくらいかかるの?」という話。気になるところですよね。
空き家管理サービスの費用って、じつはピンキリなんです。これは、お願いする頻度(週1か月1か、年数回か)と内容(見回りだけか、清掃まで含むか)によって、けっこう変わります。
京都市内でよく見かけるプランの相場でいえば、ざっくりこんな感じです。
- 月1回の巡回(外観確認・通風・ポスト整理など):5,000円〜8,000円
- 月2回以上や清掃込みプラン:8,000円〜15,000円
- 年間契約:6万円〜12万円程度(サービス内容による)
たとえば、うちの知り合いの税理士さんが管理を頼んでいる物件は、月1回の点検と、郵便物の確認、簡易清掃がついて8,000円/月。意外と良心的やな、という印象でした。
もちろん、これにプラスして草刈りやシロアリ対策などを頼む場合は、別料金になることが多いので注意が必要です。
あと、自治体によっては「空き家活用モデル事業」として管理費用の一部を補助してくれる制度もあるので、京都市の最新情報もチェックしてみてください。「空き家税」とは対照的に、こうした支援策があるのも、じつは地域の本気度の裏返しだったりします。
業者選びのポイントは“現場感”と“対応力”
「業者に頼む」とひとことで言っても、正直、どこにお願いすればいいのか、わからないですよね。ネットで「空き家管理 京都」と検索しても、出てくるのはだいたい同じような文章ばっかり。価格も「要問い合わせ」って書いてあるだけで、ようわからん。
じゃあ、どう選ぶか。
個人的には、以下の3つを基準にしてみるのが良いと思ってます。
- 現地に強いか(京都の地理感やエリア事情を理解しているか)
- 報告のスタイルが分かりやすいか(写真や報告書があるか)
- イレギュラー時の対応力があるか(鍵のトラブルや近隣対応など)
このあたり、言葉にすると当たり前なんですが、実際にやってる会社は意外と少ないんですよね。大手のフランチャイズ系だと、実際の管理は下請けに丸投げしてるケースもありますし、地元密着型でも「電話しか連絡手段がない」とかだと、遠方の所有者にはハードルが高い。
たとえば、月1の点検ごとにLINEで写真付きの報告を送ってくれるような業者さん、実際にあります。そういうところは、現場の変化にもすぐに気づいてくれるし、やっぱり安心感が違う。
ちょっとした草の伸び方、隣家からの苦情、ポストのチラシのたまり具合──そういう「空き家が動いてる」っていう空気感をキャッチしてくれるのは、人の目と勘なんです。
結局、空き家管理は「未来の選択肢を残すこと」
空き家を管理するって、いまの問題を解決するためというより、「未来に選べる余地を残す」ための行動やと思うんです。
放置したままやと、物理的にも気持ち的にも、どんどん選択肢が狭まってしまう。
床が抜けたら貸すこともできへんし、建て替えようにも更地に戻すのにお金がかかる。
近隣に迷惑がかかったら、「このエリアでは空き家対策をもっと厳しくせなあかん」っていう話にもなるかもしれない。
反対に、しっかり管理してれば、「売る」「貸す」「自分で使う」…いろんな道が残せる。
実家をどうしようか、兄弟と話し合うときも、「いまの状態やったら、すぐには貸せへんな」「でも手入れしてるし、相談は進めやすいかもな」って、冷静に考えられる。
誰かの将来の決断の支えになる。それが、空き家管理という地味で地道な作業の、本当の価値かもしれません。