
はじめに:京都で増える空き家、そして「買取」という選択肢
こないだのお彼岸、親戚で集まる機会があったんです。
そのとき、おばさんが知り合いの空き家の話をしてくれました。久しぶりに換気をしようと玄関を開けたら、床が抜けていてびっくりしたって。…笑い話みたいですけど、これ、けっこうリアルな京都の空き家あるあるやと思います。
仕事柄、私も京都の町を走っていると、屋根がちょっと傾いてる家とか、窓ガラスの向こうにホコリが積もったままの部屋とか、目につくことが多くなりました。これが時間の問題で、管理をせずにほっておくと税金や近所の人との関係まで影響してくる。
だからこそ、「もう管理も大変やし、いっそ売ろうかな」と考える人も増えてきています。
でも、普通に仲介して売ろうと思うと、買い手が決まるまで半年、1年は平気でかかることもある。そんなときに、最近よく耳にするのが「不動産会社による買取」という方法です。
今日は、この京都の空き家買取について、仕組み、メリット・デメリット、業者の探し方まで、できるだけ具体的にお話ししていきます。
京都安心すまいバンクのような仕組みと比べながら、「早く現金化したい」と思っている人にとっての一つの選択肢として整理してみようと思います。
京都の空き家買取とは?仲介との違いを知っておこう

「買取」と「仲介」の違いを簡単に言うと──
- 仲介:不動産会社が間に入って買主を探し、成約したら売る
- 買取:不動産会社が直接その空き家を買い取ってくれる
この違いだけで、スピード感がまったく変わります。
仲介だと、まず広告に出して、内覧に来てもらって、価格交渉をして、契約書を交わして…と、どうしても時間がかかる。
一方、買取は相手が不動産会社なので、交渉相手が最初から決まっている。条件さえ合えば、最短で数週間で現金化できます。「今すぐお金に変えたい」「もう管理が限界」という方には、かなり大きなメリットです。
ただし、その分、買取価格は相場より下がる傾向があります。
これは、不動産会社がその後リフォームをして再販するリスクを引き受けるからで、値段にそのリスク分が含まれるからです。
京都で「買取」が向いているケース
ここで、京都ならではの事情も踏まえて、「買取のほうが合っているな」と思うパターンをいくつか挙げてみます。
- 急いで現金が必要なとき
相続税の支払いや引っ越し費用など、すぐに現金化したい場合。 - 遠方に住んでいて管理ができないとき
京都以外の場所に暮らしていて、もう自分では通えない…そんなケース。 - 建物の状態が悪く、買主が見つかりにくい物件
雨漏りや傾きなど、手を入れないと住めない状態の空き家は、仲介で買主を探すのが大変です。 - とにかく早く手放したいとき
売れるまでの時間をかけたくない、近隣への迷惑になる前に処分したいという場合。
こうして見ると、京都市内の町家でも築50年以上の古いものが多いエリアなんかは、買取のニーズがじわじわ増えてきているのが実感としてあります。
京都安心すまいバンクとの違い
ここで、「京都安心すまいバンク」の話も少し。
これは京都市が運営している空き家マッチング制度で、所有者と借りたい・買いたい人を専門家がつないでくれる仕組みです。
最大のメリットは、営利目的ではなく、地域全体を元気にすることを目的にしている点。だから情報の信頼性が高いし、安心感があります。
ただ、安心すまいバンクの場合も、買主が見つかるまでには時間がかかります。「時間がかかってもいいから、いい人に使ってほしい」と思う方には合っていますが、「すぐに手放したい」という人には、スピード感の面では買取の方が有利です。
京都の空き家を「買取」で売るメリットとデメリット
メリット1:とにかく早く現金化できる
これはもう、一番の特徴やと思います。
仲介や空き家バンクの場合、売れるまでに何か月、長ければ1年以上かかることもざらなんですが、買取なら条件さえ合えば1〜2か月で現金化できる。
去年の夏に、右京区で築60年の一軒家を持っていた方がいました。娘さん夫婦が関東に住んでいて、「京都に戻る予定もないから手放したい」と。ところが空き家の状態が悪く、仲介で広告を出しても内覧に来る人すらいない。
そこで不動産会社の買取を選んだら、2週間で契約成立。年末の帰省のときにはもう現金が振り込まれていて、「もっと早く相談しておけばよかった」と言ってはりました。
こういうスピード感は、正直ほかの方法ではなかなか出せません。
メリット2:老朽化していてもOK

仲介だと、雨漏りや傾きがあると「現況のままでは買えません」という話になって、結果、値引き交渉が延々続くことも多いです。
でも買取の場合は、
不動産会社がその後リフォームや建て替えを前提に買ってくれるので、古い家のままでも引き取ってくれるケースが多い。
私の知人で、東山にある祖母の家を相続した人がいて。玄関を開けると床が波打ってて、「これ、修理したらいくらかかるかわからん」と頭抱えてたんですけど、買取の話を聞いて思い切ってお願いしたら、相場より少し下がったけど無事売却できた。「もう管理のために通う時間がなくなっただけでもありがたい」って言ってました。
メリット3:手続きがシンプル
もう一つ大きいのは、書類や契約の手続きがシンプルなこと。
仲介で売ろうとすると、まずは修繕、写真撮影、広告、内覧…っていう準備が必要ですが、買取だと専門業者と直接やり取りするだけ。
「もう現金化したい」「複雑な手続きは避けたい」という人には、このシンプルさは魅力やと思います。
デメリット:相場より安くなる

もちろん、いいことばかりではありません。
最大のデメリットは、売却価格が相場より安くなるということ。
これは、不動産会社がリスクを負って購入し、その後のリフォームや販売コストも見込んだ価格になるからです。だいたい相場の7割前後になることが多い印象です。
だから、「時間はかかってもできるだけ高く売りたい」という場合は仲介やバンクが合っています。逆に「多少安くなってもすぐに現金がほしい」という場合に買取が合う、という選び方になるんです。
買取を選んだ人のリアルな声
ここで、実際に私が相談を受けた方のエピソードをひとつ。
西京区に、庭が広くて立派な平屋を持っている70代のご夫婦がいました。もう住んでいないのに、毎月バスで片道1時間半かけて換気に行く生活。夏は草が伸び放題で、近所から「蚊がすごい」と言われてしまっていたそうです。
この方たちは、「もう管理に体力がついていかへん」と言って買取に決めました。価格は相場より低かったけど、「解放感がすごいわ」って言っていて。
「もっと早くこうすればよかった」と、心から言ってたのが印象的でした。
京都ならではの注意点
ただ、京都で買取を考えるなら、注意すべき点もあります。
- 町家や古民家の場合、景観条例の制限があることが多い
そのため業者が慎重になるので、査定が思ったより低く出ることがあります。 - 文化財指定や歴史的建物の場合、リフォームに制約がある
これも買取価格に影響します。業者と事前にきちんと話しておくことが大切です。 - 立地による差が大きい
同じ築50年でも、北区と下京区では需要の違いで価格が変わることがあります。
これらは地元の不動産会社ほど詳しく把握していることが多いので、「京都に強い会社」を選ぶことがとても大事です。
京都で空き家買取業者を選ぶときのポイント
さて、ここからが本題です。
いざ「買取でいこう」と思ったとして、どこにお願いするか。
これを間違えると、価格だけでなく、その後のやりとりで心底しんどくなることがあるんですよね。
ポイント1:京都に強い業者を選ぶ

これは声を大にして言いたい。
「京都の事情に詳しい業者かどうか」がほんまに大事です。
たとえば、北区の町家と宇治の団地ではまったく市場の動きが違う。
文化財指定の地域なのか、駐車スペースが取れるのか、京都ならではの道路の狭さの問題とか──地元ならではの「暗黙知」があるんです。
先日、祇園界隈の細い路地にある空き家を売りたいという方の相談を受けたときも、最初は東京の業者さんが査定してたんですが、数字だけ見てたせいか、えらい強気な金額で話を進めていたんです。結局、建築規制で自由に建て替えができないことがわかって、契約直前に頓挫した。
そこで地元の不動産会社に改めて査定をお願いしたら、「このエリアなら、むしろこういう改修で価値が出せます」と具体的なプランごと提案されて、スムーズに売却が決まったというケースもあります。
やっぱり土地勘のある人に頼む、これに尽きます。
ポイント2:複数社に査定してもらう
「買取価格は一社で決めたら損するかも」。
これ、すごくシンプルな事実です。
査定額は業者によって差があります。再販する前提のリスクの見方が違うので、30万50万くらい簡単に差が出ます。
複数社に話を聞くことで、価格の相場感が見えてくるし、業者ごとの姿勢も見える。
ある所有者さんが、最初に提示された金額に納得がいかず、3社目で100万円以上高い金額で決まったという例もありました。
「時間を短縮したいからこそ、最初の1週間はちょっと頑張って複数社に声をかける」。
これがコツです。
ポイント3:担当者の“人となり”を見る
最後に意外と大事なのが、担当者の人柄です。
数字だけで決めると、途中で説明不足や行き違いが起きやすい。
「この人なら最後までちゃんと伴走してくれそうやな」と思える人と出会えるかが、ストレスを減らす最大のポイントです。
例えば、先日お会いした下京区の物件担当の方。最初の打ち合わせの時から、「相続の書類ここで詰まりそうやから、早めに弁護士さん紹介しますね」とか、「隣家の境界もこっちで測量手配しておきます」とか、手を打つのが早い。
そのおかげで所有者さんは一度もトラブルなく、2か月で現金化できました。
「説明が早い」「こちらの不安を拾ってくれる」──この2つ、ぜひ見ておいてほしいです。
買取前にやっておきたい準備
もうひとつ大事なのが、自分でできる準備。
- 登記簿謄本を一度確認しておく(相続で名義が変わってないと、ここで時間を取られます)
- 家の中の動産(家具や荷物)の整理を進める
- 写真を何枚か撮っておく(現状を伝える材料になります)
この3つだけでも、最初のスタートが全然スムーズになります。
買取と空き家バンクの二刀流という考え方
最後に、ちょっと余談です。
「買取か、バンクか」ではなく、両方の窓口を開いておくという方法もあります。
最初の1〜2か月はバンクや仲介でチャレンジしてみて、進まなければ買取に切り替える。
京都安心すまいバンクでも、専門家が「この物件はバンクで出してみましょうか、もし動かなければ買取も視野に」と柔軟に案内してくれる場合があります。
結び:迷ったら一歩動くこと
買取は「早さ」と引き換えに「価格」を下げる選択です。
でも、持ち続けて悩む時間もまた、大きなコストになることがあります。
空き家って、ただの不動産じゃなくて、思い出や家族の歴史が詰まった箱ですよね。
だからこそ、手放すのは悩むし、迷う。
でも、その迷いが長すぎると、建物はあっという間に傷んでしまいます。
「売る」「残す」より前に、「一回ちゃんと向き合ってみる」。そこから動くことが大切なんやろなと、私自身、いろんな相談を聞いてきて強く思います。
祇園祭が一段落したこの時期、ふと路地に目をやると、使われてない町家がぽつんと佇んでることがあります。
その家の未来がどうなるかは、持ち主が最初に動くかどうかで、大きく変わる。
次の一歩、いつ踏み出しますか。
少しでも動こうと思ったとき、京都に詳しい人にまず話をしてみてほしいと思っています。