
はじめに:高校野球が気になる理由と、空き家の話につながるまで
8月5日に開幕した甲子園、仕事の合間にふとスマホを開けば、あちこちで高校野球のニュースが飛び込んでくる。普段はどちらかというと、Jリーグやプレミアリーグの試合結果ばかりを追ってるサッカー派なんやけど、それでもこの時期は、気づけば「今日どこが勝ったんやろ?」と気になってしまう。甲子園の空気って、なんであんなに人の心を惹きつけるんやろか。ふと思った。たぶんそれは、「背負っているものが見える」からなんちゃうかなと。
地方予選を勝ち抜いたチーム。地元の応援。チームメイトの想い。誰かの夢や責任や執念が、ユニフォームの背中ににじんでる。だから人は、知らん高校でも応援したくなるし、「あの子、いいピッチャーやなあ」と思って目を奪われる。

で、これがなぜ空き家の話につながるかというと──
空き家って、よう見たら「その人の背負ってるもの」がまるっと詰まった存在やと思うんよね。
住まいだったころの記憶、家族の営み、相続の経緯。長年手つかずだった理由の奥には、きっといろんな葛藤がある。だからこそ、「誰に相談するか」ってめちゃくちゃ大事なんやと思う。背負ってるものを、ただの「不動産」として扱ってほしくない。ちゃんと話を聞いてくれる人に出会いたい。
この記事では、そんな空き家にまつわるさまざまな悩みに対して、誰に相談すればいいかをテーマにまとめてみる。京都での事例や専門家の特徴も交えて紹介するので、もしあなたの心にも引っかかってる空き家があるなら、読み進めてみてほしい。
相談内容によって、頼るべき人は違う
空き家の悩みって、ほんまに人それぞれで。
- 「親から相続したけど、自分は京都に住んでへんし、正直どうしたらええかわからん」
- 「売りたいけど、古いしボロボロやし、こんなん売れるん?」
- 「いずれ戻るつもりやけど、それまでの管理が面倒」
- 「活用したいけど、何から始めてええか分からへん」
こうした悩みに対して、全部をひとりの専門家がカバーできるわけやない。つまり、「空き家=不動産会社に行けばええやろ」という単純な話では済まへんのや。
必要に応じて、税理士や弁護士、司法書士、ファイナンシャルプランナー(FP)など、いろんな専門家とつながる必要が出てくる。もちろん、不動産会社がハブになって紹介してくれるケースもあるけど、自分で「誰に、何を相談すべきか」をある程度知っておくと、よりスムーズに進む。
たとえば「売却したい」という人がまずすべきこと
一番多いのは、「とりあえず売りたい」という相談やと思う。遠方に住んでる人や、高齢の親が住んでいた家を引き継いだ人が多い。
この場合、まず頼るべきは
「地域に強い不動産会社」
京都は、エリアによって空き家の扱い方が全然違う。たとえば左京区や北区の一部では、築古の町家が「趣のある物件」として人気になることもある。逆に、南区や伏見区のように流通量の多いエリアでは、流動性重視で価格帯の調整が必要になるケースもある。

不動産会社の担当者によっては、「これは売れる」と確信をもって動いてくれる人もおるし、逆に「これは厳しいかも…」と正直に言ってくれる人もいる。どっちがええ悪いではなくて、その判断の根拠をしっかり示してくれるかがポイント。
不動産会社担当者の答え:
「まずは“売れるか売れないか”を判断する前に、“どういう人にとって価値があるか”を一緒に考えるようにしています。相続された空き家の場合、持ち主の方が“思い出”の視点で見てしまってることも多いので、第三者の視点を入れてマーケットの目線に戻すことが大事ですね」
不動産会社に相談すべきパターン:売却・賃貸・管理
ここからは、具体的な悩み別に、誰に相談するべきかを深掘りしていく。
まず多くの人が最初に思いつくであろう「不動産会社」だ。
たとえば、
- 空き家を売りたい(相続したけど遠方で使い道がない)
- 空き家を貸したい(移住者や事業者に活用してほしい)
- 空き家が荒れてきたので管理をお願いしたい というようなニーズがあるなら、まずは不動産会社に相談するのが基本線。
実際、京都市が運営する「京都市空き家情報バンク(京都安心すまいバンク)」でも、空き家の登録やマッチングを行う際、窓口となるのは地域の不動産会社だ。地元の事情や価格相場に詳しく、空き家の状態や立地によって適した活用方法を一緒に検討してくれる。
不動産会社担当者の答え:
「空き家っていうと売るか貸すかって話になりがちなんですけど、実は“管理”が一番重要なんです。特に京都のような観光地で、人目に触れる空き家は“放置されてる感”があると、周囲の景観や近隣関係にも影響してしまいます。定期巡回や草刈りだけでも、印象が変わるんですよ」
司法書士に相談すべきパターン:相続手続き・名義変更
次に、意外とつまずくのが「名義の問題」だ。「亡くなった親名義のまま放置している」「相続手続きがまだ済んでいない」「共有名義で話が進まない」といった状況では、売るにも貸すにも話が止まってしまう。
この段階で相談すべきなのは司法書士
相続登記の手続きや遺産分割協議のサポートをしてくれる専門家で、不動産の所有権移転には必須の存在だ。
司法書士の答え:
「2024年4月から、相続登記が義務化されたので、放置していた不動産もいよいよ手続きが必要になりました。“誰のものか分からない空き家”が増えてしまうと、地域としても困るんです。名義を整えておくことは、実は近所の人たちへの配慮でもあるんですよ」
弁護士に相談すべきパターン:相続トラブル・共有名義の対立

さらに問題が複雑になるのは、家族間でのトラブルや、遺産分割で揉めているケース。
たとえば、兄弟で共有している空き家を売却したいが一人が反対している、相続放棄をしたはずなのに管理責任だけ押し付けられている、というような悩みは珍しくない。
このようなときに頼るべきは弁護士
法的な見解をもとに、話し合いや手続きを整理し、最悪の場合は調停や訴訟のサポートもしてくれる。
弁護士の答え:
「“家族のことだから話し合えばなんとかなる”と思っている方が多いですが、感情のもつれがある相続では、逆に第三者が入った方がうまくいくケースが多いです。早めのご相談が“これ以上こじれないための予防”になるんですよ」
税理士に相談すべきパターン:譲渡所得税・空き家特例・相続税
次に、空き家の売却が見えてきた段階で気になるのが「税金の話」。
特に京都のように築年数が経った物件が多い地域では、売却によって利益(譲渡益)が出た場合の課税や、「被相続人の居住用財産に係る特例」など、税制上の知識が必要になることが多い。
この分野で頼れるのが税理士
売却益に対する税金の計算、特例の適用条件の確認、相続税評価額の算出など、家計や資産形成にも関わる大切な助言をしてくれる。
税理士の答え:
「『空き家って古いし安いから税金も関係ないでしょ?』と思っている方ほど危険です。昭和の家でも土地の評価額が高いことがあり、都心部では数百万円単位の税負担になることも。特例の有無で納税額が大きく変わるので、ぜひ事前にご相談ください」
「この家、使えるのか?」に答えてくれるのは建築士さん
リフォームに興味はあるけど、実際に「この建物が使える状態なのか?」「建て替えが必要なのか?」──そういう判断がつかず、動けないまま時間が経ってしまう方、けっこういらっしゃるんです。
ある日、お電話をいただいた60代の女性。「亡き母が住んでいた町家を、何かに活かせたらと思うけれど、古すぎて…」と、ずいぶん迷っておられる様子でした。
築年数は約80年。柱や梁は太くしっかりしているものの、長年手入れされておらず、雨漏りや傾きも心配とのこと。ここで活躍するのが、
建築士です。
建築士のコメント:
「建築士の仕事って、設計だけじゃないんです。『残せるかどうか』『直せるかどうか』『活かせるかどうか』──まずは診断し、将来の選択肢を“見える化”するのが私たちの役目です」
プロに一度しっかり見てもらうと、曖昧だった選択肢に光が当たることもあります。「この建物はもう無理かも」と思っていたものが、案外“芯はしっかりしている”とわかったり。

逆に、「このままでは危険なので、使うなら構造からやり直しましょう」と判断されるケースもあります。どちらにせよ、判断が“希望”になるか“諦め”になるかは、診断の手前で止まっているうちは分からない──そういうことなんです。
「どう使うか?」を一緒に考えてくれるパートナー、リノベ業者
建物の状態がある程度わかってきたら、「どう活かすか?」という視点が必要になります。ここで頼れるのが、
リノベーション業者や設計施工会社です
たとえば、あるご夫婦が「京都に移住して、ゲストハウス兼カフェを開きたい」と相談に来られたことがありました。
手に入れたのは、格安の京町家。けれど素人目には「これは住めるのか?使えるのか?全部壊さないとダメ?」といったレベル。
ここで、施工会社の提案が活きてきます。
施工担当者のコメント:
「空き家は“一点モノ”。現地を見て、状態を診て、その場に合った“活かし方”を提案することが何より大事です。たとえば全部改修せず、“住む部分”と“手を入れない部分”を分けるだけで、予算はぐっと抑えられます」
こういった現実的な提案があると、「使えるんだ」と未来が見えてきます。最近では、地域の工務店や設計事務所が“空き家活用に強い”分野に特化しつつあるのも、京都ならではの傾向です。
カフェ、アトリエ、住まい──どれも「自分のやりたいこと」に応じて、伴走してくれる人がいると心強いもの。物件を買ったあとで困らないためにも、早めにリノベ業者や建築士に相談しておくことをおすすめします。
「お金の話」を一緒に整理してくれるのはFP(ファイナンシャルプランナー)
意外と見落とされがちですが、空き家の活用や売却には「お金の話」がついて回ります。
- 売却したら税金はどれくらい?
- 解体したほうが得?
- リフォーム費用、どこまで出せる?
- 住宅ローンは組めるのか?
- 相続税対策は必要?
こうした漠然とした不安に、具体的な数字で答えてくれるのが
FP(ファイナンシャルプランナー)です
FPのコメント:
「不動産の売却や活用って、人生設計そのものと関わってきます。目先の損得じゃなく、『5年後・10年後にどうしていたいか』を一緒に考えるのが、FPの役割です」
特に最近は、「セカンドライフの住まい」「子どもに残す資産」など、長期的な視野で動き出す方が増えています。
「とにかく早く売って現金に変えたい!」という人もいれば、「売らずに収益物件として残したい」「子どもが戻るまで保有しておきたい」という人も。
空き家というのは、単なる“物件”ではなく、「これからの暮らし」に関わるテーマ。だからこそ、FPのような“俯瞰で見られる存在”のアドバイスが生きてくるんです。
京都で“信頼できる専門家”を見つけるためのチェックポイント
じゃあ、どこに相談すればいいの?──そんな声もあるでしょう。
大きなヒントになるのが、
「京都安心すまいセンター」や「京都市空き家相談窓口」など、京都の行政機関が紹介している専門家リストです。
また、空き家の活用に特化した「京都安心すまいバンク」も強い味方。物件情報だけでなく、売却相談や専門家紹介も行っており、「まず誰に何を相談すればいいかわからない」というときに、ワンクッションとして機能してくれます。
チェックポイント:
- 「空き家活用」の実績があるか?
- 専門家と直接会って話せる機会があるか?
- 地域事情に詳しいか?
- 相談のハードルが低いか?(初回無料など)
こうした視点をもとに、「この人なら」と思える相手と出会えると、空き家との向き合い方がぐっと前向きになります。
【まとめ】空き家は“ひとりで抱えこまない”ほうが、うまくいく
空き家をどうにかしたい──そう思っても、動けずに時間だけが経ってしまう。
でも、それはあなたのせいではありません。
選択肢が多くて、情報がばらばらで、専門家もそれぞれ得意分野が違う。
だからこそ、「誰に相談するか」が、最初の一歩なんです。
- 不動産会社は、売却の段取りと市場のことを知っている。
- 司法書士や弁護士は、法的な手続きを守ってくれる。
- 建築士や施工会社は、物件の可能性を見つけてくれる。
- FPは、未来の暮らしまで見据えて考えてくれる。
そして京都には、それらを支える制度や情報窓口も整っています。
「空き家と向き合いたい」と思ったその時が、動き出すチャンスかもしれません。