京都の空き家事情と制度解説 空き家の未来をつくるアイデア集

京都の空き家をどう活かす?実家を手放す前に考えたい5つの視点

2025年6月1日

こないだ、中学生の息子と散歩してたら、ぽつんと建ってる古い町家を見かけたんです。誰も住んでへんのやろなあって感じで、窓の桟も少し歪んでて。けど、そこに差し込む夕日がきれいで、思わず立ち止まってしまってね。

「この家、昔は誰かの大事な居場所やったんやろな」って。そう思ったときにふと、「実家どうしよう」って考えてる親友のことと重なったんです。空き家をそのままにしておくと、気持ちだけじゃなくて、税金や管理、近所との関係とか、あとあといろんな問題が出てきます。

今日は「京都 空き家 活用 空き家バンク 空き家税」ってキーワードに関心ある方に向けて、空き家を売るか貸すか、それとも活用するか?迷ってる方と一緒に、考えられる視点を5つ、共有してみようと思います。

空き家活用の『まなざし』についてさらに詳しく(前編)」

1.空き家を売却するメリットとリスク

先日、知り合いの大工さんと話してたら、「最近、空き家を買ってセルフリノベーションする人、増えてきたなあ」って言うてて。たしかに、僕のまわりでも「え? そこ買うの!?」みたいな物件を、うまく仕上げて住んではる人が増えてきた気がします。けど、その一方で「売ったけど、思ってたより大変やったわ…」って声もちらほら聞こえてくるんです。

空き家を持ってる方にとって、売却という選択肢は確かに魅力的です。とくに「もう住まへん」「管理しきれへん」と思っている方にとっては、固定資産税の負担や草刈り、見回りの手間から解放されるという意味でも、手放すことが一つの解決策になります。

メリットとしては、なんといってもお金に変えられること

たとえば、築古の家でも立地が良ければ、リノベーション前提で買いたいという方が出てくる可能性があります。最近は古民家再生とか、地方移住支援とか、いろんな波があるので、"ボロいから売れない"とは限らへんのです。

もうひとつは、

気持ちの整理ができること

相続で引き継いだけど、誰も住まない。でも思い出もある。だから放置……。そうして数年経つと、建物はどんどん傷んでいくし、ご近所にも迷惑がかかることも。売却という行為は、そういう意味で「けじめ」をつける行動でもあるんやと思ってます。

ただし、リスクもあります。まず

買い手が見つかるまでに時間がかかる

都市部から離れた場所や、インフラの整ってない地域では、なかなか買い手がつかないケースも少なくないです。それに価格も、相場よりずっと下がることもあります。

それから、

家を手放すというのは、やっぱり感情的にも難しいところがあります

「あの家、もう戻られへんな」って、ふと思う瞬間がある。別の友人が実家を手放すときに、

父がポツリと「ここでいろいろあったなあ」って言った

というエピソードを教えてくれたのを、今でも覚えてます。

だからこそ、売却を考えるときは、「ほんまに今がそのタイミングか?」と立ち止まってみるのも、大切なんちゃうかなと思ってます。

2.空き家を賃貸に出す場合の注意点

空き家を売らずに貸す、という選択肢もありますよね。私も何度か「売るより、貸すほうが活用としては柔らかいんちゃうか」と相談を受けることがあります。たしかに、思い出のつまった家を誰かに引き継いでもらう感覚って、ちょっと優しさがあります。でも一方で、賃貸には賃貸ならではの落とし穴もあるので、そこはしっかり抑えておきたいところです。

まず、

一番の前提になるのは「その空き家、本当に貸せる状態か?」という点

  • 人が住めるだけの設備や安全性が確保されているか
  • 耐震や雨漏り、老朽化による破損など、基本的なチェック

は欠かせません。自分の家だから感覚が鈍ってしまうんですが、貸すとなると「責任」もセットでついてくる。古い家であればあるほど、このあたりの確認は専門家にお願いするほうが安心です。

次に、

リフォームや補修の費用

これは結構な額になることもあるので、最初から

  • どこまで整備するのか
  • 最低限どれくらいの工事が必要か

を見積もっておくことが大事です。たとえば、水まわりだけを直して貸し出すというのもひとつの考え方。すべてを新品にしなくても、“使える状態”に整える工夫はあるはずです。

あと、個人的に大事やと思ってるのが

「借り手との距離感」

これは難しいテーマなんですが、賃貸に出したあとも自分の所有物である以上、気になってしまう気持ちはあると思います。ただ、相手にとっては“自分の家”になるわけで、干渉しすぎるとトラブルのもとにもなる。だからこそ、契約内容を明確にしておくことが、双方のストレスを減らすポイントやと思います。

それと、賃料設定もひと工夫いるところ。相場より高すぎても借り手がつかないし、安すぎるとリフォーム費用が回収できない。「この家なら、このくらいなら…」と自分で決めずに、地域の不動産事情に詳しい専門家に一度見てもらうのが近道かもしれません。

最後に、京都市の空き家バンクを活用する場合、登録することで信頼性が増すし、借り手にとっても安心材料になります。

  • 「変な人に貸したくない」
  • 「しっかりした人とつながりたい」

という声は多いので、行政のサポートを活用する価値はあると思っています。

貸すって、売るほどの覚悟は必要ないかもしれへんけど、ちゃんと考えないと後悔につながることもある。だからこそ、「どう貸すか」「誰に貸すか」「どこまで整えるか」を丁寧に描いていくことが、結果として“いい賃貸”になるんちゃうかなって思ってます。

3. 空き家を活用する:リノベーションという視点

近所の工務店さんが、最近ちょっと変わった古民家をカフェにしたって聞いて、見に行ったんです。元はほんまに「誰が住むねんこれ」って感じの古い家で、窓はガタガタやし、床も傾いてたらしいんですけど、見事に生まれ変わってて。

ああ、空き家って「使えるかどうか」じゃなくて、「どう使うか」なんやな、ってそのとき思ったんです。ちょっと視点を変えるだけで、価値がガラッと変わることってありますよね。

リノベーションって、つまりは「再編集」。その建物が持っている素材の良さを活かしつつ、今の暮らし方や使い方に合わせて、もう一度意味を与える作業

やと思っています。

京都の空き家って、よく見ると柱や梁が太くて、手の込んだ細工が施されてたり、庭とのつながりが考えられていたりと、素材としてはめっちゃええもんが眠ってることもあるんです。全部をピカピカの新築みたいにせんでも、「この古さがいいんです」っていう人、最近ほんまに増えてきてるし。

ただ、リノベにはお金も時間もかかります。どこを残してどこを変えるか。断熱性能や耐震性はどうか。住むなら水回りも大事。そういう判断をしていくには、やっぱり専門家と一緒に考えるのがベストやと思います。

空き家バンクを通じて出会う物件の中には、「手を入れたらすごく良くなるのに」という素材がごろごろしてます。最初から完成形を求めるより、「余白」を楽しめる人には、リノベという選択肢はとても魅力的なんちゃうかな。

「シェアハウスとしての活用事例(山科区)」
「宿泊施設としての活用事例(上京区・西陣)」

私もよく言うんですが、「家を探す」ってより「未来の暮らしを想像する」ことがスタート地点。で、その“暮らし”って、人それぞれやから、完成された家よりも、ちょっと未完成なくらいがちょうどいいってこともある。

余白がある分、自分たちで手を入れていける。そこに、暮らしの“物語”が生まれるんちゃうかなと思ってます。

4.空き家バンクの活用:京都市ならではの仕組み

先週末、息子のサッカーの試合で右京区の方まで行ったんですが、帰り道でたまたま通りかかった住宅街に、ええ雰囲気の空き家がありまして。「このあたり、ええ場所やのになあ」なんてつぶやきながら、ふと空き家バンクのことを思い出したんです。

京都市には「京都安心すまいバンク」という独自の空き家バンク制度があります。これは、空き家所有者と活用希望者をつなぐ公的なマッチングサービスで、京都市が信頼できる宅建士や建築士と連携して運営しています。営利目的の不動産仲介と違って、地域の再生や住まい方の多様性を大切にした仕組みです。
「京都市空き家バンクの登録手順」
「空き家バンクのメリットと落とし穴」

空き家バンクを使うと、物件を売りたい人も借りたい人も、

  • まずは京都市の専門相談窓口で話を聞くことから始まります
  • 電話一本、あるいは窓口で直接相談できて、
  • その後は現地調査や必要書類の提出を経て、
  • 物件がバンクに登録

されていく流れです。

掲載される物件情報は、間取りや写真だけでなく、専門家による現地調査の内容や、耐震性、設備の状態、修繕履歴などもしっかり記載されているので、情報の信頼性が高い。これって、ほんまにありがたいことで、特に遠方から京都への移住を考えている人にとっては安心材料になるんです。

実際に空き家バンクを通じて移住されたご家族が、子どもの転校や地域の自治会とのつながりに不安を持ってたんやけど、事前に地域コミュニティのことまで教えてもらえて、スムーズに馴染めたという話も聞きました。

「空き家バンクって行政の仕組みやから、なんか手続きとかめんどくさそう」と思う人もいるかもしれません。でも、実際にやってみると、担当の方が丁寧にサポートしてくれて、「こんな物件もありますよ」と提案してくれたり。こっちが思ってる以上に、寄り添ってくれるんですよね。

京都というまちの個性を活かしながら、空き家を“住まい”として再生していく。この取り組みに、ちょっとでも興味が湧いたなら、まずは気軽に話してみることから。思わぬご縁が、そこから始まるかもしれません。

5. 空き家税とその影響:知らないと損すること

最近、「空き家税って聞いたことある?」と、知り合いの不動産オーナーに尋ねられたんですが、これが意外と知られてへんのです。2023年にスタートしたこの“空き家税”こと「京都市空き家等対策条例」、実は、静かに、でも確実に、所有者にとっての“気づき”を促す仕掛けとして効いてきています。

そもそも、なぜこの税が生まれたのか。背景にあるのは、全国でも深刻化する空き家問題。そして京都市ならではの課題──伝統的な町並みの保全、観光都市としての景観維持、そういった部分とも無縁ではありません。

制度としては、長年放置されて危険とみなされる空き家に対して、固定資産税の軽減措置を解除し、逆に増額するという仕組み。

簡単に言うと、「ちゃんと使ってへんと、税金高くなるよ」

ということですね。

「それって不公平ちゃうの?」と思うかもしれません。でも、実際には“空き家になってしまった理由”は人それぞれで、そこに向き合わんことには何も始まりません。たとえば

「相続したけど手つかずのまま」

「遠方に住んでいて管理ができない」

──そういう状況が何年も続くと、近隣にも影響が出る。それを防ぐための、いわば“やんわりとした警鐘”なんです。

ここで大事なのは、「税金を取られる前に動けるかどうか」。つまり、“活用”か“処分”かを考えるタイミングを逃さないことやと思います。

「京都に導入される空き家税の影響」

空き家バンクの利用もその一手。きちんと登録して、必要な手続きを踏んで、誰かの手に渡していく。もしくは、自分でリノベーションして新たな住まいにする。いずれにしても、所有しているだけでは、残念ながら誰の得にもならへん時代が来てるんやと思います。

私はよく、古い建物を前にすると「ここ、まだいけるな」と感じることがあります。でも、それは“使われてこそ”。どれだけいい構造でも、住む人、手を入れる人がいてこそ意味がある。

空き家税という存在を、「罰」ととらえるんやなくて、「そろそろこの家、次の使い方を考えてあげてや」というサインとして受け取ってもええんちゃうかな、と思っています。

ほんのちょっとの行動で、未来は変わる。そう信じて、今日も誰かの“次の暮らし”をつなぐお手伝いをしていきたいなと思います。

まとめ:その家に、もう一度、暮らしの灯を

このコラムをここまで読んでくださった方は、きっとどこかに「どうにかしたい」という気持ちを抱えておられるんやと思います。

売るか、貸すか、活かすか──。空き家に向き合うというのは、実は単なる“不動産の処分”ではなくて、「その家にあった暮らし」や「家族の時間」と向き合うことやと思います。だからこそ、簡単には決められへんし、悩むのは当然なんです。

でも同時に、それは「次の誰かに、その場所をつなぐ」ということでもある。

売却には“けじめ”という意味があるし、賃貸には“優しさ”の要素がある。リノベーションには“物語を紡ぎなおす”力があるし、空き家バンクのような仕組みには、“ご縁をつなぐ”出会いがある。空き家税は、それらを考える「きっかけ」になってくれる。

すぐに答えを出す必要はないと思います。でも、「何もしない」でいると、状況は少しずつ確実に悪くなっていく。だからこそ、まずは一歩。誰かに話す。相談してみる。空き家バンクをのぞいてみる。それだけでも、何かが動き出すきっかけになるかもしれません。

私自身も、日々、いろんな物件を見ながら思うんです。「あ、この家、まだ生きてるな」って。誰かが手を入れて、また笑い声が響くようになったらええなって。

あなたの大切な家が、また誰かの暮らしの舞台になる日を願って。私たちも、そっとその背中を押す存在でいられたらと思います。

暮らしは、つながっていくものです。

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