
はじめに
「この家、どうしたらいいんやろう」
長年誰も住んでいない実家、かつて祖父母が暮らしていた町家、相続したはいいけど手を付けられずにそのまま──。京都では、そんな“思い出ごと取り残された空き家”が増えているのが現実です。
「売るしかないのかな」
「いや、まだ何かできるんちゃうか」
そんなふうに悩みながら検索してくれた方へ。この記事では、「京都 空き家 活用」「京都 空き家 賃貸」「空き家 カフェ 開業 京都」などで探しておられる方向けに、実際に活用されている空き家事例をベースに、活かし方のアイデアとその可能性についてお話ししていきます。
もちろん“空き家ってそんな簡単にはいかへんよな”という気持ちもよう分かります。だからこそ、この記事ではリアルに存在する京都の活用事例だけをご紹介。実際に今、誰かが使っている家。人が集まっている場所。そこには「こうすれば活かせる」というヒントがあると思うんです。
空き家活用アイデア1:古民家カフェにする
京都で空き家を活用した事例として、まず外せないのが「カフェ」という業態。観光客だけでなく、地元の人がふらっと立ち寄れる空間は、うまくいけば町に新しい流れを生むことも。
たとえば──
実例1:市川屋珈琲(東山区・清水五条)
築約200年の京町家をそのまま活かし、梁や建具、坪庭を含めて設計された町家カフェ。外観から中まで、“いじりすぎない”という選択が味になっていて、まるでタイムスリップしたような感覚。
豆や抽出法にこだわるだけでなく、空間そのものが「飲む理由」になる。そんな存在です。
市川屋珈琲|https://ichikawaya.thebase.in/
実例2:くまキッチン(中京区・西ノ京)
こちらは、洋食店と町家の融合をテーマにしたカフェ。設計・施工はEarlyArtさんによるもので、洋食メニューに合わせたインテリアと、和の外観が美しく共存しています。
くまキッチン(深草/カフェ) - Retty(レッティ)|https://retty.me/area/PRE26/ARE111/SUB47302/100001541146/
「何を出すか」×「どんな場所か」
この組み合わせを丁寧に考えることで、“投稿したくなる空間”が生まれている好例です。
それぞれに共通しているのは、
- 建物の持っていた時間を尊重する姿勢
- 立地だけに頼らず「物語」を設計していること
- 集客ではなく“人が居たくなる理由”を作っていること
カフェは競合も多い分、単なる飲食ではなく「誰かの時間を預かる場所」として考える必要があります。でも裏を返せば、空き家に眠る“誰かの思い出”が、新しい物語を紡ぐ場所にもなるんやなと感じます。
空き家活用アイデア2:ゲストハウス・民泊にする
京都のまちなかを歩いていると、暖簾が掛かった小さな宿を見かけることがあります。町家をそのまま活かしたゲストハウスや、1日1組限定の民泊など、空き家の活用方法として注目されているのが“泊まれる空き家”です。
最近知った事例で言うと、左京区の静かな住宅地にあった築70年の木造平屋。もともとは老夫婦が住んでいたお家で、相続後はしばらく空き家になっていたんですが、
「旅行者に京都らしい暮らしを体験してもらえたら」
というご家族の願いもあり、全面リノベーションして1日1組限定の一棟貸し民泊に生まれ変わりました。
この事例の特徴は、間取りの大きな変更はせず、既存の土間や縁側、建具を丁寧に残して活かしたこと。現代的な設備も加えつつ、なるべく家の記憶を保つことを優先したんです。結果、海外の旅行者には"本物の京都"として受け入れられ、リピーターも増えています。
ただし、
民泊には「旅館業法」や「住宅宿泊事業法(民泊新法)」の規制もあるので、運営には事前の手続きや近隣への配慮が欠かせません。行政への届出や用途変更、消防設備の設置など、準備に時間も手間もかかります。
それでも、空き家を地域とつなぐ宿にできたときの喜びはひとしおです。
空き家活用アイデア3:シェアハウスや学生向け住居に
もうひとつ、京都らしい活用法として紹介したいのが“シェア型住まい”です。特に大学が多い京都では、学生や若い社会人の居住ニーズが高く、駅から少し離れた空き家でも、うまくリノベすれば魅力あるシェアハウスになります。
たとえば、西陣エリアにあった築50年の空き家。2階建ての町家で、通り庭と奥座敷があって、昔ながらの味わいがある物件でした。これを、3人の大学生が暮らせるシェアハウスに改修。各部屋はプライバシーを保ちつつ、水回りは共有という形で、住人同士の交流が自然と生まれるような設計に。
住人のひとりが、建築を学ぶ学生だったこともあり、
「手を入れながら暮らす」
というコンセプトに。週末ごとにみんなで庭の手入れをしたり、漆喰を塗ったり。家そのものが“学びの場”になっていったのが印象的でした。
こうした形は、空き家の維持管理という課題に対して、住む人が主体的に関わるスタイルとしても注目されています。賃料を抑えつつ、居心地よくする工夫ができる。空き家と若者の“居場所づくり”が重なる瞬間です。
空き家活用アイデア4:こども食堂
最後にもうひとつ、空き家活用の中でも最近注目されている事例をご紹介します。
京都駅近く、七条通の少し南、かつては長らく使われていなかった町家が、いま「子ども食堂」として地域に開かれています。主催は「空き家バンク京都」──空き家の流通と利活用を後押しする民間の取り組みで、京都市と連携しながら地道な活動を続けておられます。
空き家バンク京都 子ども食堂|https://akiya-bank.org/kodomosyokudo/
この町家、「空き家バンク京都 子ども食堂」として、月に1〜2回の頻度で食事を提供。18歳以下は無料、大人も300円という低価格で、地域の人があたたかいごはんを一緒に食べる場所として機能しています。
この場所のいいところは、「子どもにとっての安心な居場所」だけにとどまらず、「大人が自分の役割を見つけられる場所」になっていること。配膳や受付、掃除や調理補助──小さな関わりの積み重ねが、地域に根ざした空き家活用の一歩を築いていると感じました。
民泊やカフェのように目立つ活用とはまた違い、
「誰かがそっと使っている」
「ひとにやさしい場所」
としての再生もまた、京都という街の文化と親和性があるように思います。
思えば、空き家って「負の遺産」や「管理の手間」と捉えられがちですが、誰かが暮らし、記憶を育てた場所でもあるんですよね。その場所が、また別の形で誰かの拠り所になる──それこそが、活用という言葉の本質かもしれません。
空き家は、売るか貸すかだけじゃない。こうしたコミュニティの器として再び命を持つこともできるし、それを支える人たちが、ちゃんと京都にはいるんです。
「わたしにも、なにかできるかな」と、そんなふうに感じた方がいたら、まずは見学に行ってみてください。きっと、次の一歩のヒントが見つかると思います。
── 結びにかえて
空き家活用って、たんに「古い建物の利活用」じゃなくて、「まちの可能性の発掘」なんやと思うんです。
空き家には、それぞれの時間があって、背景があって、愛着がある。
それを「資産」として再評価するのか、「風景」として馴染ませるのか──その選択が、まちの表情を決めていくような気がしています。
カフェでも民泊でも子ども食堂でも、自分なりの“使い道”を見つけられるように。京都の空き家は、まだまだ余白に満ちています。
わたし自身も、これから先、どんな活かし方ができるんやろかと考えながら、今日も道端の古民家に目をやっています。
※このお話は、実際に京都で空き家を地域活動に活かしておられる方々の事例をベースに、一部名前や構成を少しアレンジして紹介させていただいています。より多くの方にイメージを持っていただくための配慮として、ご理解いただければ幸いです。