
📋 この記事でわかること
日課のジョギングで街を歩いていると、ぽつぽつと人の気配が途絶えた古い家が目につくようになってきました。
「親が施設に入って、実家が空き家になったんですが、どうすればいいでしょう?」
こういうご相談が、ほんまに増えています。親御さんが大切にしてきた実家。自分たちにはもう住む場所がある。売る決心もつかず、とりあえずそのままにしている——そんな状況に悩む方が後を絶ちません。
正直に言います。「とりあえず放置」は、実は一番危険な選択肢です。固定資産税が最大6倍になるリスク、雨漏りや腐朽が進んで売却価格がゼロに近づく現実、そして解体費用という「マイナス」の発生——これが放置の末路です。
一級建築士・宅建士として、京都・関西で空き家の活用支援に関わってきた立場から、先送りすることの本当のコストと、空き家買取・活用・売却の選択肢を正直にお伝えします。
なぜ実家の空き家は「とりあえず」のまま止まってしまうのか
「明日、親しい人から『実家が空き家になったんだけど、どうしたらいい?』と相談されたら、あなたはどう答えますか?」
即答できる人は、ほぼいません。それが現実です。
空き家になったとき、一番多いパターンは「とりあえず、そのまま置いておこう」という先送りです。きょうだいで誰が相続するのか話し合うのも気まずい。親の荷物が山のように残っていて、片付ける気力も湧かない。売るべきか、貸すべきか、そもそも判断基準がわからない。だから固定資産税だけ払って、そっと蓋をしておく。
そのお気持ちは、痛いほどよく分かります。自分が生まれ育った家には、家族の思い出がたくさん詰まっていますから。「不動産という資産」としてドライに切り分けるのは、心理的なハードルが高い。
行動心理学の視点で見ると、これは株の「塩漬け」とまったく同じ状態です。値下がりした株を売れずにいるのと同じ心理——「損や面倒なことから目を背けたくなる」という人間の自然な反応です。
でも、サッカーに例えるなら。ボールを持ったまま何もしない時間が長くなるほど、相手にプレッシャーをかけられ続けるんです。時間が経てば経つほど、選択肢は狭まる。それが空き家の現実です。
放置が招く本当のリスク——固定資産税・雨漏り・解体費用の現実
① 固定資産税が最大6倍になる
誰も住んでいない家でも、持っているだけでお金は出ていきます。固定資産税の支払いに年間約10万円。火災保険料が約10万円。草刈りや郵便物の回収といった日常的な維持管理にも費用がかかる。ざっと見ても、年間数十万円のコストが何もしなくても消えていきます。
さらに怖いのが、行政の対応です。「特定空き家」に指定されると、それまで適用されていた住宅用地の特例が外れ、土地の固定資産税が最大6倍に跳ね上がります。
「うちはまだ倒れそうにないから大丈夫」と思っている方も多いと思います。でも2023年末からは、倒壊の危険まで至らなくても、窓が割れていたり雑草が茂り放題になっていたりする「管理不全空き家」に対しても、同じく税金の優遇を外す制度が始まっています。
国と自治体が本腰を入れて空き家対策に乗り出している今、「なんとなく放置」という逃げ道は、確実に塞がれつつあります。
② 雨漏りが「負動産」への入り口になる
家というものは、人が住まなくなった瞬間から傷み始めます。窓を開けて風を通す人がいなければ、湿気がこもり、カビが生え、木材はどんどん腐っていく。庭の草木は伸び放題になり、最悪の場合、シロアリやネズミの住処になります。
特に「雨漏り」は放置すると致命的です。屋根の小さな傷みから始まった雨漏りが、数年で柱や基礎まで腐食させることがある。そうなると修繕費は数百万円規模になり、空き家買取業者にも「値がつかない」と判断されるケースが出てきます。
現状維持のつもりでいるうちに、建物の価値はゼロどころか、解体費用という「マイナス」を生み出す存在へと変わっていくんです。
③ 解体費用は100〜300万円以上かかることも
「もう古いから壊してしまおう」という判断も、実は慎重に考える必要があります。木造の家を解体するだけで100〜300万円。それ以上になるケースもある。しかも更地にした瞬間、住宅用地の特例がなくなり固定資産税が跳ね上がります。
解体費用に関しては、自治体によって補助金が出る場合があります。京都市でも老朽危険空き家に関する除却補助金の制度があり、条件を満たせば費用の一部を補助してもらえることも。動く前に必ず自治体の窓口に確認してほしい部分です。
空き家買取と仲介売却——どちらを選ぶべきか
「売りたい」と思ってから動き始めると、大きく2つのルートがあります。「仲介売却」と「買取」です。それぞれ全然違う性質を持っているので、整理しておきましょう。
買取は売却価格が下がる代わりに、「すぐに現金化できる」「瑕疵担保責任を問われない」「建物の状態を問わず買い取ってもらえる」という大きなメリットがあります。
雨漏りが進んでいる、解体するお金もない、急いで現金化したい——そういうケースでは、買取業者が現実的な出口になることがあります。
ただ、「急がなくていい・状態が良い」なら仲介の方が手取りは多くなります。どちらが正解かは物件の状態と、あなたの状況次第です。
「空き家救急隊」的なサービスの注意点
最近、「空き家救急隊」「空き家専門買取」と名乗る業者が増えています。迅速に対応してくれる点は助かりますが、複数社に見積もりを取らずに1社だけで決めると、適正価格より大幅に低い価格で売ってしまうリスクがあります。
「買取は1社ではなく、必ず複数社に相談する」——これだけは守ってください。査定額が数十万〜数百万単位で変わることがあります。
また、「まず活用の可能性を知ってから売却を決める」という順番も大切です。売ってしまえば取り消しはできませんから。
「更地」「リフォーム」——素人が陥りやすい2つの罠
実家の空き家をどうにかしようと動き出したとき、多くの方がどちらかの方向に引っ張られます。「建物を壊して更地にする」か、「ピカピカに直してから貸す」か。でも、どちらも落とし穴があるんです。
罠①:「とりあえず解体して更地にする」
近所から苦情が来るのが嫌で、とりあえず建物を解体する方がいます。気持ちは分かります。でも前述のとおり、解体には100〜300万円以上かかります。しかも更地にした瞬間、住宅用地の特例がなくなり固定資産税が大幅に上がる。
駐車場などに転用してしっかり収益が上がる立地ならいいですが、そうでない場所で更地にすると、コストばかりが積み上がります。解体を検討する前に、「そのままで使い手がいないか」を一度確認してみてください。
解体補助金の申請も、解体前に動かないと使えません。まず自治体の空き家相談窓口に連絡してから判断することをおすすめします。
罠②:「フルリフォームしてから貸す」
いざ貸し出そうと思い立ったとき、不動産業者に相談すると「このままじゃ誰も借りませんよ。水回りも壁も全部ピカピカに直しましょう」と言われることがよくあります。素人目にはそれが正解に見えて、数百万円のローンを組んでフルリフォームしてしまう。
でも、立地や相場によっては、家賃を高く設定しても借り手がつかないことがあります。投資を回収できず、結局大赤字になるケースは少なくありません。
私が関わってきた事例では、古さを無理に隠すのではなく、むしろそれを「味」として活かしているものが多いです。雨漏りや床の傾きなど、致命的な欠陥だけを安価に直して「DIY可能物件」として貸し出したり、少しだけレトロな照明をあしらって「昭和のビンテージ感」を演出する。
何百万円もかけずに、若いご夫婦やアトリエを探しているクリエイターが「こんな空間を探してました!」と喜んで借りてくれることが、今の時代は本当に多い。
「古さ」を価値に変える活用アイデア——空き家は問題じゃなく「余白」
「こんな古い家、誰が使うんやろ?」と思ってしまうのは、所有者の目線に縛られているからです。
私が空間設計の現場でいつも感じるのは、「自分にとってのガラクタが、誰かにとっての宝物になり得る」ということです。
こんな空き家が、こんな使い方に変わっています
- 🌱 庭が広すぎる家→ 本気で家庭菜園を楽しみたい人の理想の環境
- 🔧 駅から遠い家→ 車いじりや木工DIYを音を気にせず楽しみたい人の工房
- ☕ 古くて隙間風が吹く土間のある家→ レトロな隠れ家カフェを開きたい若者の夢物件
- 🎨 天井の高い蔵・納屋→ アトリエ・ギャラリーとして活用
- 🏡 部屋数が多い古民家→ シェアハウス・ゲストハウスとして地域に開く
不動産屋の窓口に行くと、「築何年」「駅徒歩何分」という画一的なスペックだけで判断されてしまいます。それでは実家が持っている「見えない価値」に気づくことはできません。
京都という街は特別で、古い建物の「古さ」そのものがブランドになります。格子・土間・坪庭が残っていれば、リノベーションを前提に購入したい層から高い需要がある。「古い=安い」ではなく「古い=希少価値」として評価される市場が存在します。
シャッターが閉まりっぱなしの家が並ぶ街は、活気が失われ防犯上の不安も生まれます。でも、そこにポツンと一つ、こだわりのあるパン屋さんやシェアハウスができるだけで、人の流れが変わり、街の空気がふわっと明るくなる。
あなたの実家が、誰かが独立起業する夢の舞台装置になるかもしれない。それが、次の世代へ残す本当の価値なんやと私は思っています。
空き家活用の方法については、こちらも参考にしてください。
→ 空き家の活用方法7選——売る・貸す・マッチング・解体を徹底比較
動き出しに迷ったら——まずここから始めてほしい
ここまで読んでくれた方に、正直に話します。
「明日すぐにどうにかしろ」なんて急かすつもりは全くありません。家族の歴史が詰まった大切な場所ですから、ゆっくり時間をかけて心が納得する形を探していけばいい。
ただ、一つだけお願いしたいのは、「何が最善か分からないから、考えるのをやめる」だけは避けてほしいということです。
高校時代、サッカーで試合に出られなかった私の根っこにある後悔が、「がんばれるときにがんばる」という今の精神につながっています。空き家の問題も同じ。気力も体力もある今のうちに、少しずつでも向き合っておかないと、あとで必ず後悔することになります。
動き出しの順番
- Step 1:建物の状態を写真で記録する(スマホでOK)
- Step 2:登記名義人と相続の状況を確認する
- Step 3:自治体の空き家相談窓口 or 民間マッチングサービスに情報を登録する
- Step 4:届いた提案・査定を比較して、売却・賃貸・活用の方向を決める
- Step 5:専門家(宅建士・建築士・司法書士)に具体的な手続きを依頼する
「でも、いきなり不動産屋に相談したら、売れ売れってしつこく営業されそうで怖い」——そう感じている方は多いと思います。
そんなときにぜひ知ってほしいのが、民間の空き家マッチングサービスという選択肢です。
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外部リンク:空き家に関する全国的な情報は、国土交通省の空き家対策情報でも確認できます。
「そろそろ、うちの実家のことも考えないと」
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空き家の可能性を、写真で見てみる →よくある質問
まとめ——「先送り」こそ、最大のリスク
ここまで読んでくれてありがとうございます。
親が残してくれた財産を大切にしたいという気持ちは、本当に尊いものです。でも、その家を放置して周辺の方に迷惑をかけたり、固定資産税が跳ね上がったり、雨漏りで価値がゼロになったりしてしまっては——天国の親御さんも悲しむんじゃないかな、と私は思っています。
📌 この記事のまとめ
- 空き家放置は固定資産税の最大6倍リスク・雨漏り悪化・解体費発生という「三重苦」を招く
- 空き家買取は価格が下がる代わり、スピード・瑕疵担保免責・状態問わずというメリットがある
- 買取業者は必ず複数社で見積もりを比較する。1社だけは危険
- 「更地にする」「フルリフォームする」はコスト回収できないリスクが高い
- 京都では「古さ」が価値になる。売却前に活用の可能性を知ることが大切
- 解体補助金は自治体によって制度が異なる。解体前に必ず確認
- 「まだ決めていない」段階から使えるのがakimiiの民間マッチングサービス
あなたの手元にある大切な思い出の場所を、誰にも望まれない「負動産」にしないために。まずは一歩、踏み出してみてください。
「どんな可能性があるのか知りたい」だけでもいい。それが動き出しの最初の一歩になるかもしれへん、と私は思っています。
実家の空き家、放置するより「知ること」から始めませんか。
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穴澤 陸平(あなざわ ろっぺい)
一級建築士 / 宅地建物取引士 / MBA|コトスタイル株式会社・グッドランプ株式会社 代表
京都・関西を中心に、コトスタイルとして300件超の店舗開業・空き家活用支援に携わる。建築・不動産・経営の複合的な視点から、空き家の「出口戦略」と活用可能性を広げることを専門とする。