はじめての空き家マッチング講座 京都の空き家事情と制度解説

京都の古民家・町家を持ち続けるコストと現実——「維持できてる」と思っていたら、毎年50万円消えていた話

2026年5月18日

先週、上京区の現場帰りに少し遠回りして、路地を歩いた。

格子戸が並ぶ通り。町家の外観はきれいに見えた。でも近寄ると、軒先の木材が一部腐っている。基礎のあたりにコケが生えている。窓の隙間から雨染みが見えた。

「ちゃんと管理してます」と言っていたオーナーさんの物件だった。

管理している、の定義が人によって違う。草を刈っている、たまに換気している——それは「最低限の見回り」であって、建物の維持とは少し別の話だ。

京都の古民家・町家を空き家のまま持ち続けると、一体いくらのコストがかかっているのか。今日はそれを正直に整理します。

知った上で「それでも持ち続ける」という判断をするのと、知らずに持ち続けるのでは、10年後にまったく違う場所に立つことになる。宅建士・一級建築士として、空き家の活用支援に携わってきた立場から、数字と現場感をそのままお伝えします。

📋 この記事でわかること

  • 古民家・町家を空き家のまま持ち続けるとかかるコストの全体像
  • 固定資産税・修繕費・管理費・空き家税の実態(年間・10年換算)
  • 「管理している」ではなく「劣化が進んでいる」という現実
  • 売却に動き出すと何が変わるか(メリットの整理)
  • 売らなくても「動き出せる」選択肢(akimiiの話)

古民家・町家を「持っているだけ」でかかるコスト——年間いくらか

まず全体像を把握しておきましょう。

「持っているだけでお金はかからない」というのは、よくある誤解だ。実際には、誰も住んでいなくても毎年確実に出ていくお金がある。それが積み重なると、気づいたときには数百万円になっている。

古民家・町家を空き家のまま持ち続けるコスト一覧(年間・目安)

コストの種類 年間目安 備考
固定資産税・都市計画税 5〜20万円 エリア・評価額による。中心部は高め
火災保険・地震保険 3〜8万円 空き家は割増になることが多い
最低限の維持管理費 3〜10万円 草刈り・換気・外回り清掃など
修繕費(発生時) 10〜50万円/件 雨漏り・外壁・基礎。放置すると急増
空き家税(京都市) 数万〜数十万円 2026年度より本格課税。評価額による
合計(修繕費含まず) 年間20〜50万円〜 10年で200〜500万円以上

「修繕費は発生しなければゼロ」ではない。発生を先送りにしているだけで、老朽化は確実に進んでいる。雨漏りを放置すれば柱が腐り、修繕費が数倍になる。それが「持ち続けるリスク」の本質だ。

固定資産税——「住宅用地の特例」が外れると税額が跳ね上がる

固定資産税の話をすると、多くのオーナーさんが「知らなかった」という顔をする。

日本の固定資産税には「住宅用地の特例」という制度がある。人が住んでいる住宅の土地は、税額が最大1/6に軽減される仕組みだ。これは空き家の状態でもしばらくは適用され続けるが、「特定空き家」や「管理不全空き家」に行政から認定されると、翌年から特例が外れて税額が最大6倍になる。

2023年の法改正で何が変わったか

2023年12月施行の空き家特措法改正で、「管理不全空き家」という新しい区分が加わった。これまでは倒壊危険・著しく景観を損なうという状態にならないと認定されなかったが、改正後は「適切に管理されていない」だけでも指導の対象になりうる。

「たまに見に行っている」「見た目はそんなに悪くない」という物件でも、油断できない時代になったということだ。

📌 固定資産税が6倍になると、実際いくら増えるか

土地の固定資産税評価額が600万円(200㎡以下)の場合:
特例あり:約14,000円/年
特例なし:約84,000円/年(差額70,000円)
これが毎年かかってくる。10年で70万円の差だ。

京都市の場合、さらに空き家税(非居住住宅利活用促進税)が2026年度から本格課税される。固定資産税と空き家税の二重負担が現実になっている。詳しくはこちらの記事も参考にしてほしい。
空き家にかかる税金は3種類——固定資産税・相続税・空き家税を正直に解説

修繕費——放置すればするほど、費用は加速度的に増える

古民家・町家の修繕費は、「気づいたときには手遅れ」になりやすい。

なぜかというと、劣化は外から見えにくい部分から始まることが多いからだ。屋根の下地・柱の内部・基礎のコンクリート——外観がきれいでも、内部では静かに朽ちていることがある。

発生しやすい修繕とその費用感

修繕箇所 早期対処 放置後の費用
屋根の部分補修 10〜30万円 100〜300万円(全面葺き替え)
雨漏り補修 5〜20万円 50〜200万円(柱腐食含む)
外壁・漆喰補修 10〜30万円 50〜150万円(下地から再施工)
シロアリ被害(床・柱) 防蟻処理10〜20万円 100〜500万円(構造補修)

これを見ると、「早く気づいて対処する」のがいかに重要かわかる。

でも現実には、誰も住んでいない空き家の劣化は気づきにくい。年に数回しか訪問しない物件の屋根裏・床下を毎回チェックするオーナーはほとんどいない。「たぶん大丈夫」という感覚のまま数年が過ぎ、気づいたときには修繕費が売却価格を超えている——というケースを、私は何件も見てきた。

古民家・町家特有のリスク

京都の古民家・町家には、通常の住宅とは異なるリスクがいくつかある。

  • 土壁・漆喰:湿気に弱く、空き家状態では急速に劣化しやすい
  • 木造軸組:シロアリ・腐朽菌の被害が進むと構造体に影響する
  • 瓦屋根:棟部分の漆喰が崩れると雨漏りの原因になる。修繕費が高い
  • 隣家との近接:長屋形式は特に、一軒の劣化が隣に影響することがある

一級建築士として言うと、古民家・町家は「手を入れ続けてこそ価値が維持できる建物」だ。放置は、資産価値の消耗を加速させる行為に等しい。

「管理しています」の落とし穴——それは管理ではなく見回りかもしれない

「ちゃんと管理してます」というオーナーさんに、具体的に何をしているか聞くと、多くの場合こういう答えが返ってくる。

「月に一度、見に行っています」「窓を開けて換気しています」「草が生えたら刈っています」

それは悪いことではない。でもそれは「建物の劣化を防ぐ管理」とは少し違う。

本当の意味での「管理」に必要なこと

✅ 建物の劣化を遅らせるために必要な管理(目安)

  • 年1〜2回の屋根・外壁の目視点検(専門家による)
  • 床下・天井裏のシロアリ・腐朽菌チェック(3〜5年に一度)
  • 雨樋の詰まり確認と清掃(年1回)
  • 水道管の凍結防止・通水管理(冬季)
  • 通気・除湿——ただし開け放しより計画的な換気が必要

これを全部プロに頼むと、年間10〜20万円はかかる。セルフでやるにしても時間と知識が必要だ。

「管理コスト=お金だけ」ではない。時間・移動・精神的な負担も含めると、遠方に住むオーナーほど「管理の総コスト」は想像より重くなっている。

「大変やけど、なんとかやってる」という状態が10年続いたとき——建物はどうなっているか。それを想像してほしい。

10年後の現実——「持ち続けた」場合と「動いた」場合の差

少し先の話をする。

今から10年後、その古民家はどういう状態になっているか。2つのシナリオを並べてみる。

10年後のシミュレーション(評価額600万円の町家の場合)

項目 持ち続けた場合 今年動いた場合
固定資産税(10年分) 約14〜84万円 売却後はゼロ
修繕費(累計) 100〜300万円 不要
管理費・保険料(10年) 60〜180万円 不要
空き家税(2026〜) 数十〜数百万円 不要
建物の資産価値 大幅に下落 今の価値で換金済み
10年間の総コスト差(目安) 200〜600万円の出費 コストゼロ+売却収入

この表を見て「わかってはいたけど、改めて見るとしんどい」と感じた方は、正常な反応だと思う。知らずに10年過ごすより、知った上で決断できる方がずっといい。

「持ち続けることにコストがかかる」ということは、「動き出すことにメリットがある」ということと表裏一体だ。

京都の町家・古民家を売却するメリット——何が変わるか

「売却」という言葉に、少し後ろめたさを感じる方がいる。親が住んでいた家、祖父母が建てた家——そこには思い出がある。売ることが「裏切り」のように感じることもある。

その気持ち、すごくわかる。

でも一つだけ聞かせてほしい。建物が朽ちていくことは、その思い出に対してどうなんだろう。

誰かに使ってもらう・誰かの拠り所になる——それは「手放す」ではなく「次の物語を渡す」ということかもしれない。

売却することで変わる5つのこと

  • ✅ 固定資産税・空き家税・管理費の負担がゼロになる
  • ✅ 修繕費の突発的な出費リスクから解放される
  • ✅ まとまった現金が手に入る(売却益)
  • ✅ 精神的な管理負担がなくなる
  • ✅ 建物が誰かに使われ、朽ちずに存在し続ける

京都の町家・古民家は「希少価値」がある

一般的な中古住宅と違い、京都の古民家・町家には「古い=希少」という市場がある。格子・土間・坪庭・梁が残っている物件を、カフェ・ゲストハウス・アトリエとして使いたいという買い手・借り手が一定数いる。

「古すぎて売れない」という思い込みが、動き出しを止めていることが多い。一度査定を受けるだけで、「あ、動けるんだ」と気づくケースをたくさん見てきた。

売却の相場・流れ・注意点についてはこちらで整理しています。
空き家を売却する前に知っておく5つのこと——京都の相場・流れ・「売れない物件」の出口戦略まで

売らなくても動き出せる——まず「提案を受け取る」という選択肢

「売る気はないけど、このまま持ち続けるのもしんどい」

そういう方に、akimiiという選択肢がある。

akimiiは、空き家の写真を投稿するだけで「この物件をこんなふうに使いたい」という事業者・個人から提案が届く民間マッチングサービスだ。完全無料・匿名・営業電話なし。売る・売らないを決める前に、「どんな使い方の提案が来るか見てみる」という使い方ができる。

古民家・町家は、飲食・宿泊・アトリエ・コワーキングなど、通常の住宅では難しい用途に転換したいという借り手と相性がいい。「売れない・貸せない」と思っていた物件に、意外な提案が来ることがある。

✅ akimiiが向いている古民家・町家オーナー

  • ☑ 売るかどうかまだ決まっていない
  • ☑ 維持コストを減らしながら所有を続けたい
  • ☑ 再建築不可・老朽化が進んでいて売却が難しそう
  • ☑ 遠方に住んでいて管理が大変
  • ☑ 誰かに大切に使ってもらいたいという気持ちがある

空き家バンクとakimiiの違いはこちら。
空き家マッチングとは何か——空き家バンク・不動産との違いと選び方

よくある質問(FAQ)

Q. 古民家の管理を専門業者に頼むといくらかかりますか?

月額5,000〜30,000円程度が目安です。見回り・換気・清掃・報告写真を含むプランが多い。年間6〜36万円。自分で管理する時間・手間のコストと比較して検討してください。遠方在住の方は、専門業者への委託と物件の活用を並行して考えることをおすすめします。

Q. 再建築不可の古民家でも売れますか?

通常の不動産仲介では難しいことが多いですが、「現状のまま使いたい」という買い手・借り手は存在します。カフェ・アトリエ・民泊などの用途転換を前提にした需要があるため、民間マッチングサービスや専門の買取業者を活用する方法があります。「売れない=活用できない」ではありません。

Q. 「特定空き家」に認定されると何が起きますか?

行政から指導→勧告→命令→代執行というステップで対処されます。勧告の段階で固定資産税の住宅用地特例が外れ、税額が最大6倍になります。認定される前に動くことが、税負担を抑える最善策です。認定の基準については国土交通省の空き家対策の概要もご参照ください。

Q. 相続した古民家、名義変更前に動けますか?

賃貸・売買契約など法律行為は相続登記完了後が原則です。ただしakimiiへの登録・情報収集は名義整理前でも始められます。相続登記は2024年4月から義務化されているため、司法書士への相談を並行して進めることをおすすめします。

まとめ——古民家・町家は「手を入れ続けてこそ」光る

冒頭で歩いた路地の町家の話に戻る。

軒先が腐り始めていたあの物件、オーナーさんは「ちゃんと管理してます」と言っていた。嘘をついていたわけじゃない。自分なりに、できる範囲でやっていた。でも建物は待ってくれない。

古民家・町家という建物は、本当に美しい。格子・土間・坪庭・梁——100年かけて育ってきた空間の力がある。でもその美しさは、手を入れ続けてこそ保たれる。

「動き出すのが怖い」という気持ちはわかる。でも動かずにいることの方が、実は大きなリスクを引き受けている。

まず現状を知ることが、最初の一歩だ。査定を受ける、akimiiに登録する、税理士に相談する——どれでもいい。今日、何か一つ動いてみることが、10年後の後悔を防ぐ。

🔖 この記事のまとめ

  • 古民家・町家を持ち続けるコストは年間20〜50万円以上(修繕費は別途)
  • 2023年法改正で「管理不全空き家」も固定資産税の特例外れの対象になった
  • 修繕費は放置するほど加速度的に増える。早期対処が数十〜数百万円の差になる
  • 「見回り」は管理ではない。専門家による定期点検が建物の寿命を左右する
  • 10年持ち続けると、累計コストが200〜600万円以上になるケースがある
  • 京都の古民家・町家は「古い=希少価値」として市場で評価されることがある
  • 売らなくても、akimiiで提案を受け取ることから動き出せる

📩 持ち続けるコストより、動き出す一歩を。

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執筆者

穴澤陸平(あなざわ ろっぺい)
一級建築士・宅地建物取引士・MBA。コトスタイル株式会社・グッドランプ株式会社代表。京都・関西エリアを中心に300件超の店舗開業・空間づくりに携わる。古民家・町家の活用支援では、「売れない・貸せない」と思われていた物件を複数のテナント活用・売却につなげた実績を持つ。

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