
📋 この記事でわかること
「こんな車社会の田舎で、駐車場がない家なんか誰も借りてくれへんやろ」
地方や郊外に空き家を持つ方から、この言葉をほんまによく聞きます。日々の移動に車が欠かせない地域ほど、駐車場がないことを致命的な欠陥だと感じてしまう。
でも、正直に言います。「駐車場がない=価値がゼロ」と決めつけてしまうのは、ものすごくもったいないことです。
一級建築士・宅建士として、コトスタイルで空き家活用・店舗プロデュースに関わってきた立場から、「弱点」を嘆くのではなく視点を少しずらして借り手を見つけるための考え方をお伝えします。
「駐車場がない=誰も借りない」は思い込みかもしれない
自分たちの「当たり前」が目を曇らせる
「田舎だから、一人一台車を持っているのが当たり前」
そのエリアで暮らしていると、それが世の中の常識だと思い込んでしまいます。毎日車でスーパーに行き、車で通勤していると、「車が停められない家なんて生活できない」と考えてしまう。
でも、その「当たり前」はすべての人に当てはまるわけではありません。
自分が不便だと感じるからといって、世の中の全員が不便だと感じるわけではない。
この思い込みを外すことが、空き家活用の最初のスタートラインです。マーケティングでもよく言われる「フォーカスの法則」——全員に刺さる必要はなく、たった一人の「この家を探してた」という人に届けばいい。
「弱点を言い訳にしない」が現場の鉄則
店舗出店伴走支援をしていると、立地の悪い場所でも繁盛している店が必ずあります。「駅から遠い」「車が停めにくい」「目立たない」——そういうハンデを抱えながらも、ターゲットに刺さる「尖り」を持っている。
空き家も同じです。駐車場がないという弱点は、見方によっては「特定のターゲットに絞り込む理由」になる。万人受けしない分、刺さる人には深く刺さる物件になり得るんです。
空き家活用の選択肢全体については、こちらも参考にしてください。
→ 空き家の活用方法7選——売る・貸す・マッチング・解体を徹底比較
お金で弱点を補おうとする罠
「どうしても貸したいから、何百万円もかけて庭を潰して駐車場を作ります」
真面目な方ほど、こういう結論に飛びついてしまいがちです。でも、ちょっと待ってください。
工事費用は家賃で回収できるか
駐車場を作る外構工事には、一般的に50〜200万円程度かかることがあります。仮に工事後に家賃が月1万円上がったとして、回収には5年〜17年かかる計算です。
弱点を無理やりお金で解決しようとすると、結局は家計の首を絞めることになります。
ないものにお金をかけて「普通の家」に近づけるのではなく、今の状態のままでどう戦うかを考える方が、不動産においてははるかに賢い判断です。
過剰投資はエリアの家賃相場を超えられない
もう一つ忘れてはいけないのが、どれだけお金をかけても、そのエリアの家賃相場という上限は変わらないということです。
駐車場を作っても、周辺の家賃相場が月5万円のエリアなら、月8万円で貸すことはできません。投資費用を回収しようとして高い家賃を設定すれば、今度は「相場より高い」という理由で借り手がつかなくなる。
「駐車場がないなら作ればいい」ではなく、「駐車場がない状態のまま、誰に、どう使ってもらうか」を考えることが先決です。
「車を持たない人」を探す——ターゲットを絞ることで勝負になる
車社会の地域であっても、「車を持たずに生活している人」は確実に存在します。
「駐車場がない」を全然気にしない人たち
- 🚲 自転車・徒歩生活者→ 車の維持費を節約したい若い世代、免許を持たない人
- 👴 車を卒業した高齢者→ 夫婦二人で歩いて生活できる場所を探している
- 🏢 単身赴任の会社員→ 数年だけ。車を持ってきていない
- 🎨 アトリエ・工房利用者→ 荷物の搬入さえできれば駐車場は不要
- ☕ 小さな店舗開業者→ 徒歩圏に客が来る立地なら駐車場より間口が重要
- 🌿 自然派・スローライフ志向→ 車なし生活を積極的に選んでいる人も増えている
「歩いて生活できる」が最強の武器になる
もし実家が、駅から歩ける距離にあったり、近くにスーパーや病院があったりするなら、それは最強の武器になります。
「車社会だけど、この家の周辺だけで生活が完結する」——これは、車を持たない高齢者や単身者にとって喉から手が出るほど魅力的な条件です。
「駐車場はありません。でも徒歩5分圏内にスーパー・コンビニ・病院が揃っています。車がなくても快適に暮らせます。」
こう言い切ることで、マイナスを隠すのではなく「車を持たないことのメリット」を前面に打ち出せます。ターゲットの心に直接刺さる言葉を用意するだけで、物件の見え方は劇的に変わります。
近くに駐車場が借りられるなら、それもアピールポイントに
実家の周辺に月極駐車場があるなら、「近隣の月極駐車場を利用すれば車も使えます」という情報を添えるだけで、対象者の幅が広がります。
駐車場がないことを「欠陥」ではなく「別途相談」として提示する。小さな工夫ですが、印象は全然違います。
「ない」を嘆かず「ある」を尖らせる——マーケティングの基本
マーケティングの基本は「ないものを数える」ことではありません。「今あるものを、どう見せるか」です。
駐車場がない代わりに「何がある」かを考える
駐車場がないということは、多くの場合「その分、別の何かがある」ということです。
家賃を少し下げて「このデメリットはこの価格で納得」にする
もう一つの現実的な方法は、駐車場がない分、相場より少し家賃を安く設定することです。
「周辺の駐車場代(月5,000〜1万円)を引いた家賃」と考えてもらえれば、借り手にとっては「トータルコストは変わらない」という判断ができます。
弱点を無理に克服しようとせず、価格で正直に示す。これもれっきとした戦略です。
万人受けする100点の家を目指す必要はありません。たった一人「こういう家を探してたんです!」と言ってくれる人に出会えれば、空き家活用はそれで大成功です。
まず世間のリアルな声を聞いてみる
「理屈はわかった。でも本当にそんな借り手が見つかるのかな」
そう不安に思うなら、ひとりで悩み続ける前に、まず世間に直接聞いてみるのが一番早いです。
akimiiは、空き家の写真と簡単な情報を匿名で登録するだけで、「この家でこんなことをやりたい」という提案が世間から直接届くサービスです。
「駐車場はないけれど、現状のままで使いたい人はいませんか?」と問いかけてみると、「アトリエとして使いたいから車は停められなくていい」「自転車しか乗らないので全然気にしません」といった、想像を超えた反応が届くことがあります。
「駐車場がない」というハンデだけで、大切な実家を朽ちさせてしまう前に。今のままの状態で、どんな可能性が眠っているのかを知ることから始めてみてください。
実家の売却・賃貸の相場については、こちらも参考にしてください。
→ 「うちの実家は売れない」と諦める前に——空き家売却の相場をスマホで調べる方法
よくある質問
まとめ——「ない」を嘆かず、「ある」を尖らせる
ここまで読んでくれてありがとうございます。
📌 この記事のまとめ
- 「駐車場がない=誰も借りない」は所有者の思い込み。価値を決めるのは市場
- お金をかけて駐車場を作っても、家賃相場の上限は変わらず回収できないリスクがある
- 車を持たない層(高齢者・単身者・アトリエ利用者など)をターゲットにすれば勝負になる
- 「歩いて生活できる立地」は、車を持たない人にとって最強の武器になる
- 弱点を隠すのではなく「その代わりに何があるか」を尖らせてアピールする
- まずakimiiで現状のまま世間の反応を確認してから、次の一手を決める
「駐車場がない」というハンデだけで、大切な実家の可能性を諦めないでほしいんです。
たった一人「この家を探してた」という人が世の中にいる。その人と出会うために必要なのは、工事費用ではなく、「誰に届けるか」という発想の転換かもしれへん、と私は思っています。

穴澤 陸平(あなざわ ろっぺい)
一級建築士 / 宅地建物取引士 / MBA|コトスタイル株式会社・グッドランプ株式会社 代表
コトスタイルとして京都・関西を中心に300件超の店舗開業・空き家活用支援に携わる。建築・不動産・経営の複合的な視点から、空き家の可能性を広げることを専門とする。