
📋 この記事でわかること
実家に足を踏み入れると、ホコリの匂いと一緒に、親が暮らしていた頃の空気がよみがえります。押し入れには布団の山。食器棚には使われなくなったお皿がぎっしり。「あぁ、全部片付けなきゃいけないんだな」と思いながら、そっと鍵を閉めて帰ってくる。
そんな経験、あなたにもありませんか。
「片付けが進まない自分はダメだ」と責める必要は、まったくありません。正直に言います。完璧に空っぽにしなくても、実家を活かす方法はあります。むしろ「全部片付けてからじゃないといけない」という思い込みが、一番のブレーキになっているケースが多い。
一級建築士・宅建士として、コトスタイルで店舗出店・空き家活用の支援に関わってきた立場から、心に無理をさせない手放し方と、残置物ごと活かす現実的な選択肢をお伝えします。
「片付けなきゃ」なのに動けない——その理由は意志の問題じゃない
片付けようと気合いを入れて実家に行っても、昔のアルバムを開いてしまったり、親が愛用していた湯呑みを見て手が止まってしまったり。一向に作業が進まない。これは、現場でほんとうによく聞く「あるある」です。
実家の荷物は「ただのモノ」じゃない
自分の家の片付けと、実家の片付けは、まったく別物です。自分の持ち物なら「使わないから捨てる」という判断に、感情はそれほど絡みません。
でも、実家のモノは違う。親が一生懸命働いて買ったもの。家族の歴史そのもの。それをゴミ袋に放り込むことへの罪悪感と痛みは、当たり前のことです。
「動けない」のは、あなたが家族を大切に思っている証拠です。意志が弱いのではない。感情が正直に反応しているだけです。
「現状維持バイアス」が体を止める
人間は、よく分からないことに対してネガティブな予測を立てて、動くことを避けようとします。「不動産屋に行ったら売れ売れと言われる」「業者に頼んだら高い」「家族に相談したら揉める」——そういう不安が積み重なって、「とりあえず今のまま」という選択になってしまう。
でも、不動産において「何もしない」は現状維持ではありません。建物は静かに傷み続け、固定資産税だけが毎年消えていきます。動けない時間が長くなるほど、選択肢が狭まっていくんです。
「全部捨ててから」という思い込みが、一番のブレーキになっている
不動産会社に相談すると、「まずは家財道具を全部処分して、空っぽにしてください」と言われるのが普通です。業者に依頼すれば数十万円から百万円近い費用がかかります。自分でやるには膨大な時間と体力が必要になる。
この「ゼロかヒャクか」の発想が、片付けを余計しんどくしています。
「リフォームしないと使えない」も、思い込みかもしれない
もう一つよくある思い込みが、「古い家はリフォームしないと誰も使ってくれない」というものです。
水回りから壁紙まで全部ピカピカにフルリノベーションしないと、誰も借りてくれませんよ——そう言われて、数百万円のローンを組んで改修してしまう方がいます。でも、どれだけお金をかけても、そのエリアの家賃相場という上限は超えられません。投資したリフォーム費用を回収するのに何十年もかかり、手元にお金が残らないというケースが後を絶ちません。
お金をかけて「売れやすくする」より、今のままで「使ってくれる人を探す」という発想に切り替えることが、実は近道になることがあります。
残置物ごと貸す——荷物が誰かの「ありがとう」に変わる逆転の発想
ここで少し視点を変えてみましょう。
実は「家具や家電がそのまま残っている家を借りたい」というニーズが、世の中にはかなりあります。
「残置物あり」が強みになる人たちがいる
単身赴任で数年だけ地方に転勤するお父さん。地元を出て初めて一人暮らしを始める学生さん。数年間だけ京都で仕事をする移住者。こういう方々にとって、一から生活家電や家具を揃えるのは大きな負担です。
「冷蔵庫も洗濯機も炊飯器も最初から揃っているなら、引越しがすごく楽になる」——あなたの実家に残された家財道具が、そのままありがたい設備として機能するケースが、現場では実際にあります。
「残置物あり」を喜ぶ借り手、こんな人たちがいます
- 🧳 単身赴任者→ 数年だけなので家電を買いたくない
- 🎓 学生・若者→ 初期費用を抑えたい、荷物が少ない
- ☕ カフェ・店舗開業者→ 古い家具がそのままインテリアになる
- 🎨 クリエイター・作家→ 生活感のある空間がアトリエとして魅力的
- 🌿 移住希望者→ まず住んでみたい、初期投資を最小限にしたい
昭和の家具は「レトロな価値」になる
さらに言うと、古びた木の本棚や昭和デザインの照明、立派なちゃぶ台——これらは、新築のマンションには絶対にない「ビンテージ感」を持っています。
空間設計の現場で感じるのは、「わざとらしく整えられた空間」より「誰かの暮らしの記憶が染み込んだ空間」の方が、今の時代は人を惹きつけることがある、ということです。素人の手づくり感、バラバラな家具の取り合わせ、使い込まれた木の質感——そういうものが「場の空気」をつくる。
お金をかけて捨てなくても、そのまま置いておくことで、物件の魅力を高める演出として機能することがあります。これが、現場で起きているリアルな逆転現象です。
空き家の活用方法については、こちらも参考にしてください。
→ 空き家の活用方法7選——売る・貸す・マッチング・解体を徹底比較
貸しながら少しずつ——心の整理と荷物の整理を同時に進める仕組み
「残置物ごと貸す」と言っても、全部そのままにする必要はありません。
まず「本当に大切なもの」だけ持ち帰る
写真、手紙、親の形見の品。本当に手元に置きたいものだけを、まず段ボール数箱分だけ持ち帰る。それだけでいい。
残りの家具や生活用品は、「今のまま」として誰かに使ってもらう。そうやって人に家を貸しながら、何年かかけて少しずつ心の整理と荷物の整理を進めていけばいい。焦って一度にすべてを終わらせる必要なんて、どこにもありません。
家が「生きる」姿を見ることで、罪悪感が消えていく
誰もいない実家がホコリをかぶって少しずつ朽ちていくのを見るのは、つらいものです。でも、誰かがそこに住んで、夜に明かりが灯り、笑い声が聞こえるようになる。
そうやって家が再び「生きる」姿を見ると、多くの所有者の方が「親の家を活かすことができた」と、ホッと肩の荷を下ろされます。思い出を「捨てる」のではなく、「誰かの暮らしの背景」としてバトンを渡す。そう考えると、少し気持ちが軽くなりませんか。
残置物の「片付けルール」を最初に決めておく
貸し出す場合、残置物の扱いについて最初に明確にしておくことが大切です。
📋 残置物ごと貸し出すときに決めておくこと
- ☑️ 借り手が自由に使っていいもの・使ってはいけないものを区別する
- ☑️ 「壊れたら交換不要・処分してOK」か「連絡してから処分」かを決める
- ☑️ 所有者が年に一度など定期的に持ち帰りたいものをあらかじめ別にしておく
- ☑️ 退去時に残置物をどう扱うかを契約書に明記する
残置物の扱いは、宅建士や不動産会社と相談しながら、契約書にきちんと落とし込んでおくことが必要です。「なんとなく貸した」状態は、後々トラブルのもとになります。
どうしても手放したいなら——売却・買取という選択肢
「やっぱり管理し続けるのは難しい」「家族間でも方向が決まった」という場合は、売却または買取という選択肢が現実的になります。
荷物があっても売却・買取はできる
「荷物が残っている状態では売れない」と思っている方が多いのですが、必ずしもそうではありません。
仲介売却の場合は、売却前に残置物を処分するのが一般的です。ただし買取の場合は、残置物がある状態でも買い取ってもらえるケースがあります。「空き家救急隊」「空き家専門買取」と名乗る業者の中には、残置物の処分も含めて対応してくれるところもあります。
ただし、買取価格は仲介売却より6〜8割程度に下がることが多い。急いで売らなくていい・状態が比較的良いなら、仲介の方が手取りが多くなります。どちらが向いているかは物件の状況と、あなたの状況次第です。
買取は必ず複数社に見積もりを取る
買取を選ぶ場合は、1社だけで決めないことが鉄則です。査定額が数十万〜数百万単位で変わることがあります。「空き家救急隊」など迅速対応をうたう業者も増えていますが、焦って1社だけで決めると適正価格より大幅に低い価格になるリスクがある。必ず複数社に見積もりを取って比較してください。
空き家の売却全般については、こちらも参考にしてください。
→ 空き家売却の前に知っておく5つのこと——京都の相場・流れ・売れない物件の出口戦略
動き出しの最初の一歩——まず「誰かの目」を借りてみる
「でも、片付けが終わっていないのに相談なんてできない」と思っていませんか。
そんなことはありません。今の状態のまま、まず「誰かの目」を借りてみることが大切です。
「明日すぐに売れ」なんて急かすつもりはまったくありません。ゆっくり時間をかけて、みんなが納得する形を探していけばいい。ただ、「どうしていいか分からないから、考えるのをやめる」だけは避けてほしいんです。
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空き家の可能性を、写真で見てみる →よくある質問
まとめ——空っぽにしなくていい。今のままの家に、可能性はある
片付けが進まないのは、あなたが怠けているからじゃありません。家族の歴史に向き合っているからです。
📌 この記事のまとめ
- 「全部捨ててから」という完璧主義が、一番のブレーキになっている
- 残置物ごと貸す「家具付き物件」を求める借り手は実際にいる
- 昭和の家具・古い照明は、今の時代には「レトロな価値」になることがある
- 貸しながら少しずつ片付ける——焦って一度に終わらせる必要はない
- 売却・買取を選ぶなら、残置物込みで対応できる業者も。複数社見積もりが必須
- 「まだ決めていない」段階からakimiiで可能性を知ることができる
完璧じゃなくていい。今のままの「ちょっと古くて荷物がある家」でも、面白がって使ってくれる人は必ず世の中にいます。
思い出を「捨てる」のではなく、「誰かの暮らしの背景」としてバトンを渡す。その小さな発想の転換が、あなたと実家にとっての、最初の大切な一歩になるかもしれへん、と私は思っています。
「空っぽにしなきゃ」と思っていた実家が、
誰かの夢の場所になるかもしれません。
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穴澤 陸平(あなざわ ろっぺい)
一級建築士 / 宅地建物取引士 / MBA|コトスタイル株式会社・グッドランプ株式会社 代表
コトスタイルとして京都・関西を中心に300件超の店舗開業・空き家活用支援に携わる。建築・不動産・経営の複合的な視点から、空き家の可能性を広げることを専門とする。