
はじめに
週末の朝、近所の神社まで散歩していたら、ふと目についた一軒の家。窓は閉ざされ、庭には雑草が生い茂っていた。「誰か住んでへんのかな…」と呟いて、思わず立ち止まってしまった。こういう家、最近よう見る気がする。
実際、京都市では空き家の数が年々増えています。国の統計によると、京都市の空き家率は全国平均よりも高く、とくに中心部から少し離れた地域では目立ってきてる。景観の問題、防災面でのリスク、地域コミュニティの分断…。いろんな課題が、そこに隠れてるんやと思う。
今回は、そんな「京都市の空き家事情」について、できるだけわかりやすく、具体的な数字や背景を交えながら整理してみました。タイトルの通り、15の切り口から京都の現状を見つめ直してみたいと思います。
1. 京都市の空き家率は全国平均よりも高い
総務省の「住宅・土地統計調査(2018年)」によると、京都市の空き家率は16.2%。全国平均(13.6%)より高く、主要都市の中でも上位に入る。この数字、実は地元の人ほどピンと来ないかもしれへんけど、じわじわ増え続けてるってのが実感としてある。
特に気になるのが、右京区、北区、左京区など、中心部からちょっと外れた住宅街。子育て世代の転出や高齢化の影響で、「住む人がいない家」が目立ち始めてる。見た目には“普通”やけど、空気感が違うというか…。家って、人がいないと傷みやすいんやなと実感する。
参照:統計局ホームページ/平成30年住宅・土地統計調査 調査の結果 : https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/tyousake.html
2. 空き家の半数近くが「放置状態」にある
京都市が独自に行った調査によると、空き家のうち約45%が「定期的な管理がされていない」状態。つまり、誰も手入れしてへん。草木が伸び放題、郵便受けはチラシでパンパン。そんな家がご近所にあったら、やっぱり気になる。
実はこの「放置状態」、防災や防犯のリスクも高めてる。火事になったり、不法侵入があったり。しかも所有者に連絡がつかないケースも多い。放置の背景には、相続問題や経済的理由、思い出が強すぎて手放せない…みたいな事情もある。
3. 高齢者の独居率が空き家増加と連動している
京都市の高齢化率は28.7%(2022年現在)で、全国平均よりやや高い。その中でも「独居高齢者」が増えているのが特徴的。親世代が一人で暮らし、子世代は市外や県外に出ていく。やがて住む人がいなくなって、空き家になる…という流れやね。
特に、長年住み慣れた家を離れた後の管理は難しい。介護施設に入居したけど、家はそのまま残ってる。そんな例、私の知り合いにもちらほらいる。想像してた以上に「空き家予備軍」は身近にあるんやなって感じる。
4. 空き家の種類:賃貸用・売却用・別荘用・その他
統計上、空き家は「賃貸用」「売却用」「二次的住宅(別荘など)」「その他の住宅」に分類される。京都市の場合、「その他の住宅」の割合が約40%。これは、いわゆる“持ち家で使ってない家”。つまり、住もうと思えば住めるけど、誰も住んでいない家が多いってこと。
別荘やセカンドハウスというより、相続して使い道が決まらないまま、というケースがほとんどやと思う。何となく“空き家”と聞くとボロボロの古家を想像しがちやけど、実際は意外としっかりした住宅がそのまま残ってることも多い。
5. 京都市内でもエリアによって空き家率に差がある
例えば、北区や右京区では空き家率が20%を超えてるエリアもある一方で、中京区や下京区のような中心部では一桁台のことも。観光地に近いエリアや交通の便がいいところは、やっぱり需要がある。
ただし、これは「将来も安泰」という意味ではない。住宅の老朽化や人口構造の変化によって、今は問題がなくても、10年後には様相が変わってるかもしれへん。だからこそ、エリアごとの傾向を見ておくのは大事。
6. 景観と空き家:京都ならではの課題
京都は景観保全のまち。歴史的な街並みがそのまま残ってる地域では、空き家が放置されると「景観を損なう」として住民からの声が上がることも多い。祇園や東山のような観光エリアだけでなく、洛北や洛西の住宅街でも同じような意識がある。
一方で、景観条例などの制限があるため、空き家をリノベーションしたり活用したりする際に、コストや手間がかかる。これが「活用したくてもできない」障壁になってる場合もある。京都ならではの二律背反というか、難しさがあるなと思う。
7. 空き家率が高い地域にはどんな傾向があるのか?
地域を歩いていると、何となく「ここ、ちょっと空き家多そうやな」と感じる場所があるんです。京都市内でも、そんなエリアが実際にあります。で、そういう地域って共通点があることが多くて。
たとえば駅から遠いとか、昔ながらの街並みが残ってるけど車が入らへんとか、周辺にスーパーや病院が少ないとか。生活するにはちょっと不便やな…と感じる条件が重なってることが多いです。
でも、それが悪いわけやない。静かで落ち着いた環境を好む人にとってはむしろ魅力やったりする。最近では、そんな場所を選んでリノベーションして移住する人も増えてきてるんです。
結局のところ、「不便やから空き家になる」っていう一面もあるけど、「不便を楽しめる人にとっての宝」でもあるわけで。誰にとってもベストな場所ってのは、意外と少ないのかもしれません。
8. 若者が離れるまちと残るまちの違い
これは空き家問題とかなり深く関係してる話やと思うんですが、「若い人が住み続けるまち」と「出ていってしまうまち」、その差ってなんやろ?と考えることが多いです。
進学や就職で外に出るのは仕方ないとしても、戻ってこない理由があるとしたら、それは「住みたい」と思える何かが足りないからかもしれません。
たとえば、働く場所が少ない、家賃が高い、子育てしにくい…そんな声をよく聞きます。逆に、若者が定着してるまちは、カフェやコワーキングスペースがあったり、移住者とのつながりをつくる工夫があったりする。
空き家をどう使うかは、実はこういう「まちの空気」をつくることにもつながってるんちゃうかなと。単に建物を埋めるだけやなくて、そこに住む人の暮らし方まで想像できると、もっと面白くなる気がしています。
9. 相続されない空き家、されすぎる空き家
これは最近特に増えてる話で、相続が関係してくると空き家問題は一気に複雑になります。
「誰も住まへんし、いらんわ」と相続放棄されてしまう家。逆に、「兄弟5人で相続したけど、誰が何するか決まらへん」というパターンも。どっちも、管理がされないまま放置されがちです。
相続されないと、最終的には国に帰属されるかもしれないけど、そこまでに時間もかかるし手続きも大変。一方、相続されすぎると権利関係が複雑になり、売るにも使うにも足かせになる。
このへんの問題は、法改正で少しずつ変わりつつあるけど、現場ではまだまだ混乱がある。だからこそ、家族で「どうしたいか」を早めに話し合うのがほんまに大事なんやと思います。
10. 空き家の向こうに見える、地域の記憶と未来
空き家って、ただの空っぽの建物じゃないんですよね。その家に住んでた人の暮らしや、地域の歴史がぎゅっと詰まってる。
たとえば、昔は近所の子どもたちが集まって遊んでた家。今は誰も住んでなくても、その家を見るたびに何かを思い出す人もいる。そういう記憶って、すごく大事やと思うんです。
でも、そのまま放置されて朽ちていくのを見てるのは、なんとも言えない気持ちになりますよね。
リノベーションしてカフェにしたり、子ども食堂になったり、地域の人が集まる場所に生まれ変わる事例もあります。空き家は、ただの問題やなくて、地域の未来をつくる余白でもある。
「ここに、何を描けるか」。それを考えることが、空き家問題の本質に近づくことなんちゃうかなって思います。
11. 相続放棄による空き家の“名義不明”問題
ある日、不動産登記を確認してみると、名義人が「故人」のままになっていた──そんなケース、実は少なくありません。特に京都のように、長年住み継がれた家が多い地域では、相続人がいない、あるいは相続を放棄したことで、所有者不明の空き家が放置されてしまう問題が増えています。
相続放棄をすると、その物件には誰も手を出さなくなり、結果的に“管理できない家”として放置されがちです。行政としても勝手に壊すこともできず、空き家税の課税対象かどうかの判断も難しい状態に。
この問題、実は相続登記の義務化(2024年4月施行)によって、少しずつ改善されていく見込みです。ただ、すでに長年放置されている家については、まだまだ解決には時間がかかりそうです。
身近な誰かが亡くなったとき、その後の手続きに追われて心がついてこないのも当然。でも、“住まない家”ほど、時間との勝負になってくるのかもしれません。
12. 京都の空き家“激戦区”はどこ?〜エリア別動向と傾向〜
京都市内で特に空き家が目立つエリア、気になりませんか?データで見ると、上京区、中京区、東山区といった中心部に加え、伏見区や北区でも増加傾向がみられます。
特徴としては、「昔ながらの町家が多く残っている地域ほど空き家率が高い」。これは裏を返せば、魅力的な建物が活かされずに眠っている、ということでもあります。
観光地に近い東山区や中京区などは、民泊需要やリノベーション向きの物件として注目されやすいものの、条例や地域住民との折り合いが難しく、空き家活用がスムーズに進まないケースもあります。
また、地価や建築制限の厳しい地域では、建て替えや活用コストの高さがネックに。単純に「空き家=お得」とはいかないのが現実です。
エリアごとの特性を理解することが、空き家活用の第一歩。地図を広げて、「ここに住んでみたいな」と想像するところから、意外と始まるのかもしれません。
13. 空き家が近隣住民に与える“見えないコスト”
空き家って、そのままにしておくと、近所にどんな影響があると思いますか?
- 一つは、景観。草が生い茂った庭や、壁が剥がれた建物は、それだけで周囲の雰囲気を暗くしてしまいます。
- 二つ目は、防犯上の不安。誰も出入りしない家があると、不審者が身を潜めやすくなり、空き巣や火災のリスクも上がってしまいます。
- 三つ目は、子どもや高齢者の安全。崩れそうなブロック塀やガラス戸があると、通学路や散歩コースに不安を抱える人も増えてきます。
つまり空き家って、そこに住む人だけでなく、まわりの暮らしにも大きな影響を与えてしまうもの。所有者として「自分の家が近所の誰かを困らせていないか?」と考えることが、これからの空き家対策の基本になりそうです。
14. 若者世代の“京都Uターン”と空き家バンクの接点
最近、京都に帰ってくる若者が増えてきている、そんな話をよく耳にします。地元で子育てしたい、自然や文化に触れながら暮らしたい──その動機はさまざまですが、その「受け皿」として空き家バンクの存在がじわじわと注目されてきています。
都市部での生活に疲れた若い世代が、ちょっと古びた町家を自分たちらしくリノベーションして、カフェやアトリエにしたり、小さな暮らしを営んだり。そういう姿が、京都の各地でぽつぽつと現れてきています。
もちろん、補助金制度や地域との調整など、ハードルも多いです。でも「空き家があることで、新しい人が地域に入ってくる」という流れが、これからの京都にとってはとても大事な意味を持つように思います。
空き家バンクって、“家を貸す・借りる”だけじゃない。その先に、人と人との関係性まで生まれていく可能性がある、そんな道具なのかもしれません。
15. 空き家に向き合う“地域コミュニティ”のちから
最後に取り上げたいのが、地域ぐるみで空き家問題に向き合う取り組み。これは行政でも、不動産でもない、もっと地元密着のアプローチです。
たとえば自治会が主導して、空き家の所有者と連絡をとり、庭の手入れをしたり、管理を引き受けたりする例もあります。あるいは、地域のNPOが若者に空き家を紹介して、空き家をシェアハウスに変えてしまう動きも。
こうした取り組みは、どれも“人のつながり”が土台になっているのが特徴です。データだけでは測れない、目に見えないエネルギーが、地域にはまだまだ残ってるということ。
空き家の問題って、行政や税制だけでは到底解決できない。でも、誰かが「なんとかしたい」と思って動くことから、少しずつ動き出していく
──それを京都のまちが教えてくれているような気がしています。
【あとがき】空き家のこと、もっと話していこう
ここまで15の視点から、京都の空き家事情について見てきました。データも交えつつ、実際の現場の感覚にも寄せてみたつもりです。
でも、本当に大事なのは、これを読んでくださった方が「うちもそろそろ考えなあかんな」と、家族で話すきっかけになったり、「ちょっと聞いてみようかな」と動くきっかけになることやと思ってます。
空き家の問題って、どこか「自分とは関係ない」と思ってしまいがち。でも実際は、親の家、祖父母の家、実家の近所、町内の空き地…どこかで必ず関わるテーマなんですよね。
京都のまちがこれからも美しくあってほしい。そんな想いをこめて、これからも、わかりやすくて動きやすい情報を伝えていきたいと思ってます。
また、次の記事も読んでいただけたらうれしいです。