京都の空き家事情と制度解説

空き家 売るべきか貸すべきか|京都オーナーが後悔しない選択——放置が一番危ない理由と、動き出す前に知っておくこと

2026年6月7日

京都の空き家を売るべきか貸すべきか後悔しない選択と京都市空き家バンク活用法を解説するイメージ

6月に入り、私の住む京都・北大路のあたりも、梅雨入にあわせて湿気が増して気がします。

今日も事務所に、こんな相談が届きました。

「親が施設に入って実家が空き家になったんですが、売るべきか貸すべきか決められなくて。とりあえずそのまま放置している状態なんです……」

思い出の詰まった実家。手放すのは寂しいし、貸すためのリフォーム費用も出せない。だから「今は困ってないし、このままでいいか」と決断を先送りにしてしまう——そのお気持ち、現場にいる私にも痛いほどよく分かります。

でも、あえて少し厳しいことを言わせてください。「空き家の放置は、現状維持ではなく、赤字の垂れ流し」です。

一級建築士・宅建士として、コトスタイルで京都・関西の店舗出店・空き家活用支援に関わってきた立場から、後悔しない選択をするための「現場の思考法」をお伝えします。

「放置」は現状維持じゃない——見えないお金が消え続ける

「誰も住んでいないんだから、お金なんてかからないでしょ?」——そう高を括っていると、あとで大変なことになります。

空き家を「ただ持つ」だけでかかるコスト

コストの種類
年間目安
5年間合計
固定資産税・都市計画税
10〜20万円
50〜100万円
火災保険料
3〜15万円
15〜75万円
草刈り・清掃・管理
3〜10万円
15〜50万円
交通費・光熱費基本料
2〜5万円
10〜25万円
合計目安
18〜50万円
90〜250万円以上

空き家の放置は、穴の開いたバケツに水を注ぎ続けるようなものです。決断を先送りにしている間にも、あなたの大切な家計から「見えないお金」が確実に消えていっています。

空き家放置のリスクについては、こちらも参考にしてください。
「いつか使うかも」は空き家放置の最大の言い訳——決断の先送りが生む本当の損失

京都の空き家特有のリスク——夏の管理・景観条例・空き家税

京都の空き家には、他のエリアより気をつけるべき固有のリスクがあります。

① 京都の夏は過酷——草刈り・シロアリ・近隣トラブル

京都の夏は蒸し暑く、庭の雑草は驚くべきスピードで伸び放題になります。お盆に帰省して汗だくになりながら草刈りをする——それでもサボれば、近隣から「虫が湧く」「防犯上危ない」とクレームが入ることがある。

人の住まない家は湿気がこもりやすく、放置すればシロアリの被害に遭い、数百万円の資産価値が吹き飛んでしまうこともあります。

② 特定空き家に指定されると固定資産税が最大6倍

管理が行き届かない「管理不全空き家」や「特定空き家」に認定されると、固定資産税の住宅用地特例が外れ、税負担が最大6倍に跳ね上がるリスクがあります。2023年末からは倒壊の危険がなくても、雑草が茂りすぎている・窓が割れているといった状態でも認定される仕組みになっています。

③ 京都市の「空き家税」——2030年度から課税開始予定

京都市では「非居住住宅利活用促進税(通称:空き家税)」が2030年度(令和12年度)から課税開始予定です。居住者のいない住宅を対象に新たな税負担が加わる方向で動いています。

「まだ先の話やし」と放置するのではなく、今から動いておく方が将来の負担が小さくなります。

④ 京都の景観条例——売却・改修時の注意点

京都市は景観に関する条例が全国でも特に厳しいエリアです。物件を売却する際や改修する際、エリアによっては外観の色彩・看板デザイン・増改築に制限がかかることがあります。売却・賃貸の前に建築士や宅建士に確認しておくことをおすすめします。

「売るか貸すか」でフリーズしない思考法

なぜ多くの方が空き家を放置してしまうのか。「売るか貸すか」の二択で、絶対に失敗しない完璧な正解を探そうとしてしまうからです。

「売るなら少しでも高く売れるタイミングを狙わなきゃ」「貸すなら何百万円もかけてリフォームしないと借り手がつかないよね」——真面目な方ほど、そうやってハードルを高く設定してしまいます。

白黒つけず「グラデーション」で考える

空き家問題は「売る」「貸す」という白黒の二択だけで考える必要はありません。不動産の現場には、もっとゆるやかなグラデーションの選択肢がたくさんあります。

「こんなボロ家、誰も借りないだろう」と思っていても、「壁を自由にDIYしていいなら、ぜひアトリエとして借りたい」という若者がいるかもしれない。「リフォーム費用が出せない」という弱点は、借りる側からすれば「自分好みの空間をゼロから作れる最高の余白」に変わることがあります。

正解は一つじゃない。そう思うだけで、少し気持ちが楽になりませんか。

📋 後悔しない選択のための思考の順番

  1. 今すぐ売却・賃貸を決める必要はない——まず「放置のコスト」を自覚する
  2. 建物の現状を写真で記録し、相続登記が完了しているか確認する
  3. 周辺の相場をSUUMO・HOME'Sで自分でも確認する(相場感を持つ)
  4. akimiiで「世間がこの家をどう見ているか」を確認する
  5. 届いた提案の方向性をもとに、宅建士・税理士に相談して具体策を決める

京都市の空き家バンクを使う前に知っておくこと

「とりあえず京都市の空き家バンクに登録してみよう」という方も多いですが、使う前に知っておいてほしいことがあります。

京都市の空き家バンクの概要

京都市では「京都市空き家活用ナビ」として、空き家の情報提供・マッチング・相談窓口を設けています。自治体が運営しているため信頼性が高く、費用は無料です。詳細は京都市の空き家対策ページで確認できます。

空き家バンクのメリット・注意点

メリット
注意点
自治体運営で信頼性が高い
問い合わせが来るまでに時間がかかることがある
登録・利用は無料
再建築不可・借地権物件は登録できないことも
移住・UIターン層など特定需要に強い
売買・賃貸の仲介は別途不動産会社が必要
補助金制度と連携しやすい
相続登記が完了していないと登録できない

空き家バンクに登録する前の準備

📋 空き家バンク登録前に準備すること

  • ☑️ 相続登記の完了——2024年4月から義務化。名義が被相続人のままだと登録できない
  • ☑️ 建物の現況確認——雨漏り・シロアリ・傾きなど既存の欠陥を把握しておく
  • ☑️ 権利関係の確認——再建築不可・借地権・抵当権の有無
  • ☑️ 希望条件の整理——売却か賃貸か、価格帯の希望

売る・貸す・活用する——京都の空き家に向いている選択肢

「どれが自分に合っているか」を判断するために、選択肢を整理しておきます。

選択肢
向いているケース
京都ならではのポイント
仲介売却
早く手放したい・立地が良い・状態が比較的良い
古民家・町家は希少価値で高値がつくことも
買取
老朽化・訳ありでも早く手放したい
複数社見積もりが必須(価格差が大きい)
賃貸(通常)
収入を得ながら所有を続けたい
リフォームより現状渡し・DIY可が需要高め
定期借家契約
いつか自分で使う予定がある
期間満了で確実に戻ってくる安心感
空き家バンク
移住者・古民家活用希望者に届けたい
京都市の補助金制度と連携しやすい
民間マッチング(akimii)
まだ方向が決まっていない・可能性を知りたい
古民家・カフェ・アトリエ需要が全国から集まりやすい

京都の古い家は「古さ」が強みになる

京都の場合、築年数が古い・和の造りが残っているという物件の特徴は、他のエリアとは異なる価値を持ちます。

格子・土間・坪庭・町家の雰囲気——これらはリノベーションを前提に購入したい層や、京都らしい空間で店舗・カフェを開きたい人から高い需要があります。「古い=価値が低い」ではなく、「古い=希少価値」として市場が動くことがある。これが京都の不動産の面白いところです。

京都の相場については、こちらも参考にしてください。
「うちの実家は売れない」と諦める前に——空き家売却の相場をスマホで調べる方法

決める前に、まず世間の声を聞いてみる

「とはいえ、うちの実家でそんな都合のいい借り手や買い手が見つかるのかな……」

そう不安に思うなら、ひとりで悩み続けるのはやめましょう。いきなり不動産屋さんに駆け込んで「これは売れませんね」と鼻で笑われたり、業者に言われるがままに高額なリフォームローンを組まされたりする前に、まずは「テストマーケティング」をしてみてください。

akimiiは、スマホから匿名でご実家の写真を数枚のせるだけで、「この家でこんなことをやりたい」という提案が世間から直接届くサービスです。

「直すお金はないけれど、現状のままで使いたい人はいませんか?」と正直に書いてみる。すると「それなら週末だけのカフェとして使わせてほしい」「シェアハウスを運営したいから譲ってほしい」といった、想像をはるかに超えたアイデアが無料で届くことがあります。

「ええやん、うちの実家にはこんな使い道があったんや」——その需要が見えてから、売るか貸すかをじっくり選べばいいんです。

売るか貸すか決める前に、
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よくある質問

Q. 京都市の空き家バンクに登録するにはどうすればいいですか?

京都市の空き家活用ナビのウェブサイトから申請できます。登録には相続登記が完了していること、建物の権利関係が整理されていることが前提になります。登録費用は無料ですが、実際の売買・賃貸契約には別途不動産会社が必要です。まず京都市の空き家相談窓口に問い合わせてみてください。

Q. 京都の古民家・町家は売りやすいですか?

エリアと状態によります。格子・土間・坪庭など京都らしい意匠が残っている物件は、リノベーションを前提に購入したい層や店舗開業希望者からの需要があります。通常の仲介では評価されにくい物件でも、古民家専門の不動産会社や民間マッチングサービスを活用することで、適切な買い手と出会えるケースがあります。

Q. 京都市の空き家税はいつから始まりますか?

2030年度(令和12年度)から課税開始予定です。居住者のいない住宅を対象に新たな税負担が加わる方向で進んでいます。詳細・最新情報は京都市のウェブサイトで確認してください。「まだ先の話」と先送りせず、今から方向性を決めておくことをおすすめします。

Q. 売るか貸すか、どちらが得ですか?

物件の状態・立地・家族の状況によって全然違います。一概にどちらが得とは言えません。「今すぐ現金が必要」なら売却、「毎月の収入を得ながら所有を続けたい」なら賃貸、「方向がまだ決まっていない」ならakimiiで需要を確認してから判断するのがリスクを最小化できます。

Q. 空き家のリフォームなしで借り手を見つけることはできますか?

できます。「現状有姿・DIY可能物件」として募集することで、自分でリノベーションしたいクリエイターやカフェ開業希望者など、古い状態そのものを価値として見てくれる借り手と出会えることがあります。特に京都では古民家・町家の雰囲気を活かしたい人が全国から集まります。まずakimiiで需要を確認することをおすすめします。

まとめ——放置が一番危ない。でも、焦らなくていい

実家が空き家になったとき、一番やってはいけないのは「どうしていいか分からないから、とりあえず放置する」ことです。

📌 この記事のまとめ

  • 空き家を持つだけで年間18〜50万円程度のコストがかかる。5年で最大250万円以上
  • 特定空き家に認定されると固定資産税が最大6倍。京都市では2030年度から空き家税も始まる
  • 「売るか貸すか」の二択でフリーズするより、グラデーションの選択肢を並べて考える
  • 京都の空き家バンクは有効だが、相続登記・権利確認などの準備が必要
  • 京都の古民家・町家は「古さ」が希少価値になる——通常の仲介以外の選択肢を知っておく
  • 売るか貸すかを決める前に、akimiiで世間の需要を確認してから動くのが最もリスクが低い

焦って売却したり、無理なリフォームをしたりする必要はありません。まずは今週末、ご実家の窓を開けて風を通しに行ったついでに、スマホで写真を何枚か撮ってみてください。その小さなアクションが、赤字の垂れ流しをストップさせ、ご実家の新しい未来をつくる確実な一歩になると私は思っています。

売るか貸すか、今すぐ決めなくていい。
まず「世間の声」を知ることから始めませんか。

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穴澤陸平

穴澤 陸平(あなざわ ろっぺい)

一級建築士 / 宅地建物取引士 / MBA|コトスタイル株式会社・グッドランプ株式会社 代表

コトスタイルとして京都・関西を中心に300件超の店舗開業・空き家活用支援に携わる。建築・不動産・経営の複合的な視点から、空き家の可能性を広げることを専門とする。

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