はじめての空き家マッチング講座

不動産屋が教えてくれない「空き家活用」の本当に相談すべき専門家——業界縦割りの裏事情と、誰に頼るべきかの全体図

2026年6月6日

空き家活用で本当に相談すべき専門家と業界縦割りの裏事情を解説するイメージ

6月に入り、京都も少しじめっとした梅雨の気配を感じるようになってきました。休日の朝は、いつものように鴨川沿いをランニングして心と身体のリズムを整えます。

今日も事務所に、こんな切実な相談が届きました。

「親から実家を引き継いだんですが、不動産屋に相談すべきか、工務店か、税理士か……いったい誰に相談すればいいんでしょうか?あちこち行った挙句、疲れてしまって、もう空き家バンクに登録して、タダで差し上げますって手放そうかな」

この「誰に相談すればいいか分からない」という迷子状態、現場でほんまによく見かけます。

空き家問題がこんなにややこしくなる最大の原因は、「不動産業界の縦割り構造」にあります。あなたが不勉強なのではなく、構造的に迷子になるようにできているんです。

一級建築士・宅建士として、コトスタイルで空き家活用の支援に関わってきた立場から、空き家相談で知っておくべき「専門家の裏事情」と本当に頼るべきプロの選び方をお伝えします。

専門家に相談して「迷子」になる空き家あるある

空き家を持て余した方が最初に経験するのが「誰に相談したらいいか分からない」という壁です。不動産屋に行ったら「売りましょう」、工務店に行ったら「直しましょう」、税理士に相談したら税金のことしか教えてもらえなかった。

「結局、誰が私の実家のことをトータルで考えてくれるの?」——この疑問は、業界の構造を知らないと永遠に解決しません。

専門家の数だけ、異なる「正解」が出てくる

不動産屋さんに行けばほぼ100%「とりあえず売りましょう」と言われます。彼らは物件を売買して仲介手数料をもらうプロだからです。リフォーム会社に相談すれば「綺麗に直して貸しましょう」と提案されます。工事を受注するのが彼らの仕事だからです。

それぞれの専門家は、自分の「得意分野(=利益になる分野)」の答えしか持っていないんです。

📌 空き家相談の「迷子あるある」

  • 不動産屋に行ったら「売れません(うちでは扱えません)」と言われた
  • 工務店に行ったら「とにかくリフォームしないと貸せない」と言われた
  • 税理士に行ったら「私は税金の話しかできないので」と言われた
  • 解体業者に行ったら「壊して更地にするのが一番ですよ」と言われた
  • あちこち回って疲れた挙句、「差し上げます」と投げやりになる

業界の縦割り構造——なぜ「本当のアドバイス」がもらえないのか

不動産業界は「売る」「貸す」「直す」「壊す」「税金を処理する」「法的な権利を整理する」——それぞれ別の専門家が担当します。「あなたのご実家にとって、総合的に見てどれが一番いい選択か」をフラットに考えてくれる人が、現場にはほとんどいません。

「担当外」と言われた瞬間に迷子になる

不動産仲介会社は仲介手数料で収益を得るビジネスモデルです。売れない物件・貸せない物件は積極的に扱いません。「古い・立地が悪い・権利関係が複雑」——こういった物件は「うちでは扱えません」と言われる可能性が高い。

その「扱えません」という言葉が「価値がない」と聞こえてしまって、所有者さんが絶望するんやと思います。でも実際には「その業者のビジネスモデルに合わない」というだけで、物件の価値とは別の話です。

業者への丸投げのリスクについては、こちらも参考にしてください。
空き家を業者に「丸投げ」すると損をする理由——主導権を守る方法

専門家ごとの「得意・不得意」を正しく理解する

専門家
得意なこと
苦手・できないこと
収益構造
不動産仲介会社
売却・賃貸の仲介、相場把握
建物の活用提案・税務・法的権利整理
仲介手数料
リフォーム会社・工務店
修繕・改修工事、コスト見積もり
売却の可否・税務・費用対効果の判断
工事請負費
税理士
相続税・譲渡所得税の計算・節税
建物の活用方法・不動産取引の実務
顧問料・申告報酬
司法書士
相続登記・権利関係の整理
活用方法の提案・税務・交渉代理
手続き報酬
解体業者
建物の解体・廃材処理
売却・賃貸・活用の可否判断
解体工事費
一級建築士(設計事務所)
建物の活用提案・空間価値の見極め・リノベーション設計
売却仲介・税務処理
設計監理料

どの専門家も「自分の得意範囲」しかカバーできていません。あなたの実家をトータルで考えてくれる専門家は、一人では存在しないんです。

「売却ありき」で大失敗しかけたリアルな事例

ある所有者さんが、大手の不動産屋に相談に行きました。立地が不便で建物も古かったため、「こんなボロ家、どうやっても売れません。解体して更地にするか、タダでもいいから誰かに差し上げますと募集するしかないですね」と冷たく突き放されてしまいました。

「親の思い出が詰まった大切な家なのに、価値ゼロだなんて……」そのひどく落ち込んだ状態で私の事務所にいらっしゃいました。

空間のプロが見た「斜め上」の活路

私は一緒に現地を見せてもらい、こう言いました。「ええやん。これ、売らずにこのまま貸したらめっちゃ面白いですよ」

不動産屋の視点では価値はゼロかもしれませんが、空間プロデュースの視点で見れば、古いながらも味わい深い「余白」がたくさんありました。

結果的に、「内装を自由にDIYしていい物件」としてそのまま貸し出すと、「こういうアトリエを探してたんです!」という若手クリエイターが入居してくれました。

誰に相談するかで、空き家の未来は天と地ほど変わってしまう。これが現場で起きているリアルです。

この実例が教えてくれること

  • ✅ 不動産屋の「売れない」は、その業者の客層に合わないという意味
  • ✅ 空間設計の視点から見ると「価値ゼロ」の物件はほとんど存在しない
  • ✅ 解体・差し上げより前に、別の専門家の意見を聞くべきだった
  • ✅ リフォームなし・費用ゼロで借り手が見つかることがある

本当に頼るべき「全体を俯瞰できるプロ」の選び方

「白黒をすぐに迫ってこない人」を選ぶ

一番のポイントは、「売るか壊すか」といった極端な二択をすぐに迫ってくるのではなく、「今の状態でどんな使い道があるか」をグラデーションで一緒に考えてくれる人を探すことです。

📋 信頼できる専門家の見極め方

  • ✅ 最初から「売りましょう」「直しましょう」と決めつけない
  • ✅ 現状確認(家族・資金・方向性)を丁寧にしてくれる
  • ✅ 自分の得意分野以外の選択肢も提示してくれる
  • ✅ 「最終決断はあなたです」という立場をとる
  • ✅ 宅建士・建築士・税理士のネットワークを持ち連携できる

複数の専門家を「チーム」として使う発想

📋 空き家活用の「チーム専門家」構成例

  • 🏠 一級建築士(空間活用・リノベ設計)→ 建物の可能性を見極め活用方向を決める
  • 📝 宅建士(不動産会社)→ 賃貸・売却の条件設定、契約書の作成
  • 💴 税理士→ 相続税・譲渡所得税の最適化
  • 📋 司法書士→ 相続登記・借地権整理など権利関係の整理
  • 🌐 akimii(民間マッチング)→ 世間の需要を事前に把握して方向性を決める

相談する前にやること——正しい順番

「いきなり専門家に相談に行く」ことが、実は迷子になる一番の原因です。何も決まっていない状態で専門家の前に立つと、その専門家の得意分野の方向に引き込まれやすいからです。

📋 専門家に相談する前にやること

  1. 建物の現状を写真で記録する(外観・各部屋・水回り)
  2. 相続登記の状態を確認する(名義が誰か・登記済みかどうか)
  3. 土地・建物の権利関係を確認する(所有か借地か・再建築可か不可か)
  4. 自分が「どうしたいか」の方向性を大まかに決める
  5. 周辺の相場をポータルサイトで確認する
  6. akimiiで世間の需要を確認する

相続登記は最優先——2024年4月から義務化

2024年4月から相続登記が義務化されました。名義が被相続人のままの物件は売却・賃貸の契約ができません。「どう使うかは後で決める」という場合でも、相続登記だけは早めに進めておくことをおすすめします。

空き家の売却について相場を知りたい方はこちら。
「うちの実家は売れない」と諦める前に——空き家売却の相場をスマホで調べる方法

プロの意見を聞く前に、まず世間の声を知る

「そんな全体を見てくれる専門家なんて、すぐには見つからないよ」——そうですよね。だったら、いきなりプロの看板をくぐる前に、まずは世間の人たちに直接「うちの家、どう思いますか?」と聞いてみるのが一番確実です。

akimiiは、空き家の写真を匿名で登録するだけで「週末カフェとして使いたい」「現状のままで借りたい」といったアイデアが世間から直接届くサービスです。

プロの意見を聞く前に、まずは世間のリアルな需要を知っておく。それが、業者に「価値がない」と安く買い叩かれないための最強の防具になります。

需要が先に見えると、専門家との話が変わる

「この家でカフェをやりたいという提案が届きました」という情報を持って不動産屋に行くのと、何も情報を持たずに行くのとでは、話の展開がまったく違います。需要があるという根拠を持って相談できれば、「売れません」という一方的な結論に引き込まれることはありません。

空き家マッチングについては、こちらも参考にしてください。
空き家マッチングとは何か——空き家バンク・不動産会社との違いと選び方

専門家に相談する前に、まず世間の声を聞いてみませんか。
それが、業者に振り回されない最初の一手です。

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よくある質問

Q. 空き家の相談は、まず誰に行くべきですか?

方向性が決まっているならその目的に合った専門家に相談するのが効率的です。まだ何も決まっていないなら、akimiiで世間の需要を確認しながら方向性を絞ってから専門家に相談する順番がおすすめです。相続登記が未完了なら司法書士に真っ先に相談してください。

Q. 不動産屋に「売れない・価値がない」と言われた家でも他の方法がありますか?

あります。不動産屋の「売れない」はうちの客層に合わないという意味であることが多いです。DIY型賃貸・空き家バンク登録・民間マッチングサービス(akimii)・古民家再生専門の建築士への相談など、通常の仲介以外の選択肢が多数あります。

Q. 空き家の相談で費用がかからない方法はありますか?

あります。akimiiへの匿名登録は無料です。自治体の空き家相談窓口も無料で利用できます。専門家に有料で相談する前にこれらの無料窓口をフル活用することをおすすめします。

Q. 相続登記をしないとどうなりますか?

2024年4月から相続登記が義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料が課せられる可能性があります。また名義が被相続人のままでは売却・賃貸の契約ができません。

Q. 空き家バンクに登録するのは有効ですか?

有効な選択肢の一つですが万能ではありません。現状のまま・低価格・DIY自由という条件で登録することで古民家活用に興味を持つ方との出会いが生まれることがあります。akimiiと並行して使うことで、より広く需要を探せます。

まとめ——「誰に相談するか」が、空き家の未来を決める

📌 この記事のまとめ

  • 不動産屋は「売ること」、工務店は「直すこと」——それぞれの得意範囲しかアドバイスしてくれない
  • 業界の縦割り構造により、「総合的な視点でのアドバイス」をしてくれる専門家が少ない
  • 「白黒を迫ってこない」「全体をグラデーションで考えてくれる」専門家を選ぶ
  • 相談前にやること:写真記録・相続登記確認・相場確認・世間の需要確認(6ステップ)
  • 相続登記は2024年4月から義務化。最優先で確認と手続きを
  • プロに相談する前にakimiiで需要を確認する——これが主導権を守る最強の一手

「どこに行ってもいい答えがもらえなかった」と落ち込んで、大切なご実家をタダ同然で手放してしまう前に。まずは今週末、実家の写真を数枚撮ってみてください。「えっ、うちの実家ってこんな使い道があったんや」——その小さな気づきが、専門家の言葉に振り回されず、あなたとご実家にとっての最高の選択を見つけるための確実な一歩になると、私は強く思っています。

「差し上げます」より先に、
世間が何を求めているか知ることから始めませんか。

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穴澤陸平

穴澤 陸平(あなざわ ろっぺい)

一級建築士 / 宅地建物取引士 / MBA|コトスタイル株式会社・グッドランプ株式会社 代表

コトスタイルとして京都・関西を中心に300件超の店舗開業・空き家活用支援に携わる。建築・不動産・経営の複合的な視点から、空き家の可能性を広げることを専門とする。

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