
📋 この記事でわかること
休日の朝、頭の中を空っぽにしたくて街をランニングしていると、古びているけれど味のある家によく出会います。
「ここを改装して小さなカフェにしたら、めっちゃええやん」——職業柄、ついつい立ち止まって考えてしまいます。
でも、そんな家の所有者さんが不動産屋の窓口で肩を落としている姿を、現場でほんまによく見かけます。
「うちの実家、不動産屋さんに『価値がないから売れませんね』って言われちゃって……」
プロからそう断言されたら、「もう誰も見向きもしないのか」と絶望的な気持ちになりますよね。
でも、ちょっと待ってください。その「売れない」という言葉、実はあなたの実家の価値がないからではなく、単にその担当者の力量不足や、会社の都合から出た言葉かもしれません。
「プロの言葉=絶対の正解」ではない理由
「不動産屋さんなんだから、家を売るプロでしょ?」——多くの方がそう思っていますが、お医者さんに内科・外科があるように、不動産業者にもはっきりとした「得意分野」があります。
駅前のピカピカな新築マンションを売るのが得意な会社もあれば、郊外のファミリー向け建売住宅ばかりを扱っている会社もある。
新築マンションをメインに扱っている営業マンに、築50年で少し雨漏りするような実家を持ち込んだらどうなるか。彼らの頭の中や顧客リストには「駅から徒歩5分で最新設備の家」を探している人しかいません。
「うちでは売れません」は、「あなたの実家に価値がない」という意味ではなく、「うちの客層には合いません」という意味かもしれないんです。
業者が「売れない」と言う本当の事情
少しシビアな話をします。
不動産屋のビジネスモデルは、物件を売買したときの仲介手数料で成り立っています。営業マンの立場からすれば、同じ時間と労力をかけるなら、パッと案内してすぐに決まる数千万円のキレイな物件の方が圧倒的に効率がいい。
古い空き家は、隣地との境界線が曖昧だったり、残置物が山積みだったり、修繕が必要だったりと、とにかく手間がかかります。「儲からないし面倒だから扱いたくない」というのが本音だったりすることもある。
「売れない」と突き放されたからといって、ご実家の価値がゼロだとは絶対に思い込まないでください。
📌 不動産屋が「売れない」と言う本当の理由
- その会社の顧客層・得意分野と合わない
- 手間がかかる割に仲介手数料が低い
- 古い物件の再生手法・ネットワークを持っていない
- 「売れにくい物件」として扱うと社内評価が下がる
「売れない家」が「買いたい家」に変わる視点
京都で店舗デザインや店舗開業のお手伝いをしていると、「価値の逆転」という現象によく出会います。
普通の不動産屋から見れば「古くて薄暗い土間」でも、アトリエや雑貨店を開きたい若者から見れば「レトロでめっちゃ雰囲気のある最高の空間」に見える。「庭の草むしりが大変な家」は、家庭菜園を本気でやりたい人にとっては「夢のようなマイホーム」になる。
その「古さ」や「不便さ」を丸ごと面白がってくれる人は、世の中に必ず存在しています。ただ、その人たちが普通の不動産屋の窓口には行っていないだけです。
業者に「価値なし」と言われた特徴が、ある人には「価値あり」に変わる
- 🏚 古くて薄暗い土間→ カフェ・アトリエを開きたい人の「最高の素材」
- 🌱 庭が広すぎる→ 家庭菜園・自給自足志向の人には夢の条件
- 🔧 修繕が必要→ 「DIYしながら住みたい」人には逆に歓迎
- 🚂 駅から遠い・不便→ 静かな環境を求めるクリエイターには最高
- 🏯 古い和の造り→ 京都では「希少価値」として市場が動く
1社の「売れません」で実家を解体しないで
業者に「このままじゃ売れない」と言われて焦り、「じゃあ解体して更地にするしかないか」と数百万円の解体工事を契約してしまう方がいます。
でも、建物を壊して更地にした瞬間に固定資産税の住宅用地特例が外れ、税負担が大きく増えることがあります。さらに解体費用100〜300万円が先にかかる。
誰に相談するかで、不動産の価値は天と地ほど変わります。たった1社に断られたくらいで、親御さんが残してくれた実家を諦めないでほしいんです。
空き家を放置することのリスクについては、こちらも参考にしてください。
→ 空き家の税金——固定資産税・特定空き家指定のリスクを解説
セカンドオピニオンという考え方
病気になって重大な診断を受けたとき、1人のお医者さんの言葉だけで決めず、別のお医者さんにも意見を聞く「セカンドオピニオン」がありますよね。
空き家の活用も、まったく同じです。
「この不動産屋さんとは、うちの実家の相性が合わなかっただけだ」——そう割り切って、古い家の再生を得意としている業者や、別の視点を持つ専門家に意見を聞いてみることをおすすめします。
ひとつの窓口でバタンと冷たく扉を閉められたとしても、隣には「そういう家を待ってたんです!」と大きく開いている扉があるかもしれない。
複数社に相談することで「何が普通か」が見えてくる
複数社に話を聞くと、「査定額が数十万〜数百万単位で変わる」「A社はダメと言ったのにB社は積極的だった」という経験をする方が多いです。
比べることで初めて「何が普通で、何がおかしいのか」が分かってくる。それが、主導権を持った判断につながります。
業者への相談の前に知っておくべきことはこちら。
→ 空き家を業者に「丸投げ」すると損をする理由——主導権を守る方法
諦める前に、世間の本当の需要を探る
「何軒も不動産屋を回って断られるのは精神的にしんどい」——そんな方には、いきなり業者の看板をくぐるのではなく、世間の人たちに直接聞いてみるという手があります。
akimiiは、空き家の写真を匿名で登録するだけで、「この家をこんなふうに使いたい」というアイデアが世間から直接届くサービスです。
不動産屋に「売れない」と見放されていた家が、「現状のまま買いたい」「内装をDIYしてカフェにしたい」という熱烈なオファーを受けることがあります。
無理に売ることを決断する前に、まず「世間の生の声」を聞いてから方向性を決めても、遅くはありません。
空き家マッチングについて詳しくはこちら。
→ 空き家マッチングとは何か——空き家バンク・不動産会社との違いと選び方
よくある質問
まとめ——「売れない」は死刑宣告じゃない
不動産屋の「売れません」という言葉は、あなたの実家への絶対的な死刑宣告ではありません。その担当者の力量や、会社のビジネスモデルに合わなかっただけのことかもしれない。
📌 この記事のまとめ
- 不動産業者にも「得意分野」がある。相性が合わないだけで価値がゼロではない
- 業者が断る本音は「手間の割に儲からない」ことも多い
- 古い家の「不便さ・古さ」は、別の視点から見ると「最高の魅力」になり得る
- 1社の判断で解体を決めると、解体費用+固定資産税増加という二重苦になるリスクがある
- セカンドオピニオン感覚で複数社に相談し、世間の需要も確かめてから決める
あなたのご実家には、まだ誰も気づいていない面白い「余白」が眠っているかもしれへん。プロの言葉に振り回されて焦って動く前に、少しだけ立ち止まって別の視点から光を当ててみてください。
今週末、スマホで実家の写真を1枚撮ってみる。
その小さな一歩が、新しい未来の入口になります。
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穴澤 陸平(あなざわ ろっぺい)
一級建築士 / 宅地建物取引士 / MBA|コトスタイル株式会社・グッドランプ株式会社 代表
コトスタイルとして京都・関西を中心に300件超の店舗開業・空き家活用支援に携わる。建築・不動産・経営の複合的な視点から、空き家の可能性を広げることを専門とする。