京都の空き家事情と制度解説

空き家の「相続税対策」——売るより貸す方が税金が安くなる仕組みと、貸家建付地という節税の盾

2026年6月5日

空き家の相続税対策として売るより貸す方が税金が安くなる貸家建付地の仕組みを解説するイメージ

⚠ この記事に関する注意事項

この記事は一般的な情報提供を目的としています。相続税・贈与税などの税務については個々の状況によって大きく異なります。具体的な節税対策や税額の計算については、必ず税理士または税務署にご相談ください。

6月に入り、京都もすこしじめっとした空気に包まれてきました。休日の朝は、いつものように鴨川沿いをランニングして心と身体のリズムを整えます。

今日も事務所に、切実なご相談が届きました。

「親が亡くなった後、実家の不動産の税金がどうなるか不安で……。もう空き家バンクに登録して、タダで差し上げますって手放そうかな」

見えない税金の恐怖から、大切な資産を投げ捨てようとしていませんか。

ちょっと待ってください。空き家を手放す前に「人に貸す」という選択肢を挟むだけで、税金が劇的に安くなる可能性があります。

一級建築士・宅建士として、コトスタイルで店舗出店・空き家活用の支援に関わってきた立場から、空き家を「最強の節税の盾」に変える仕組みをお伝えします。ただし税務の詳細は必ず税理士にご確認ください。

「空き家のまま持つ」と税金の標的になりやすい理由

使わない家でも「高い評価額」で計算される

親が住んでいた家を相続したとき、誰も住まないからといってそのまま空き家にしておくのは、税金の面から見ると一番もったいない状態です。

なぜなら、税金の計算上、その土地と建物は「あなたが100%自由に使える資産(自用地)」として高い評価額で計算されてしまうからです。

「誰も住んでいないし古くてボロボロだから価値は低いだろう」——それはあくまで所有者側の感覚です。税務署から見れば、使っていない状態の方が「好き勝手に使える資産」として、むしろ高く評価されます。使っていないのに高い評価額のまま相続税を請求される——これが空き家放置の隠れた落とし穴です。

「差し上げます」と焦る前に立ち止まる

「税金で何百万円も取られるくらいなら、さっさと手放したい」——その重圧から、空き家バンクに登録したり「タダでもいいから差し上げます」と持ちかけたりする方がいます。

でも、手放すという白黒の決断を急ぐ前に、その家を「資産を守るための盾」として使う方法を考えてみてください。

空き家を手放す前にやれることについては、こちらも参考にしてください。
相続した空き家、売るか貸すか迷ったら「まずこれ」——決断より先にやるべきこと

「貸家建付地」で評価額が下がるマジック

実は、不動産の評価額を合法的に下げるルールがあります。それが「貸家建付地(かしやたてつけち)」という仕組みです。

「自分が自由に使えない」から安くなる

自分で使わずに人に家を貸していると、どうなるでしょうか。

「そこには住んでいる人がいるから、大家さんといえども勝手に壊したり売ったりできないよね」とみなされます。つまり、「自由にできない不便さがある分、資産としての評価額を少しおまけしてあげましょう」と、税金の計算ベースが安くなるんです。

状態
評価の扱い
評価額の目安
空き家(誰も住んでいない)
自用地として100%評価
路線価×面積の100%
賃貸中(誰かが住んでいる)
貸家建付地として減額評価
路線価×面積から約15〜21%減額

人に貸しているというだけで、土地の評価額が約15〜21%程度下がるケースがあります(借地権割合・借家権割合により異なります)。これが、賃貸に出す最大のメリットです。

家賃収入は「おまけ」でいい——本当の目的は評価額を下げること

「こんな古い家、大した家賃は取れないし割に合わない」と思うかもしれません。でも相続税対策として考えるなら、家賃の高さはそこまで重要ではありません。

本質は「人に貸しているという事実」を作って、資産の評価額をガツンと下げること。毎月の家賃はあくまでおまけであり、本当の目的は「数百万単位の税金を守るための強力な資産防衛」です。この投資思考への切り替えができると、空き家の見え方がガラリと変わります。

評価額の下がり方——数字で見る節税効果

少し具体的に整理しておきます。貸家建付地の計算式は以下の通りです。

📋 貸家建付地の評価額の計算式

貸家建付地の評価額 = 自用地評価額 × (1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
※ 借地権割合:国税庁の路線価図で確認(エリアにより60〜90%)
※ 借家権割合:全国一律30%
※ 賃貸割合:実際に賃貸している割合(満室なら100%)

計算例(借地権割合60%のエリアの場合)

条件
自用地評価額
貸家建付地評価額
節税効果
借地権割合60%・借家権割合30%・賃貸割合100%
5,000万円
4,100万円
900万円減
借地権割合70%・借家権割合30%・賃貸割合100%
5,000万円
3,950万円
1,050万円減

評価額が1,000万円近く下がると、相続税率によっては数十万円〜数百万円の節税効果が生まれます。具体的な計算は個々の状況によって大きく異なるため、必ず税理士に相談してください。

賃貸に出して相続税を回避した実例

ここで、私が現場で実際に聞いたあるケースをご紹介します。

Cさんは、立地の良い場所にある古い実家を相続する予定でした。普通に計算すると相続税の基礎控除額を少し超えてしまい、数百万円の税金が発生しそうな状態だったんです。

そこでCさんは、実家を慌てて安値で売るのではなく、税理士に相談した上で、少しだけ手を入れて相場より安めの家賃で人に貸し出しました。

結果として、その土地は貸家建付地として評価額が下がり、見事に基礎控除の枠内に収まりました。数百万円の相続税をゼロでやり過ごしつつ、毎月の家賃収入まで手に入れたのです。

Cさんの実例まとめ

  • ✅ 評価額が基礎控除の枠内に収まり、相続税ゼロを実現
  • ✅ 売却せずに家を保有したまま節税できた
  • ✅ 毎月の家賃収入も得られるようになった
  • ✅ 税理士と宅建士が連携して最適な方法を選択

注意点——やり方を間違えると逆効果になることも

「貸せばとにかく節税になる」と単純に考えると、落とし穴にはまることがあります。いくつか重要な注意点をお伝えします。

⚠ 貸家建付地の節税で気をつけること

  • 相続発生直前に急いで賃貸に出しても認められない場合がある——節税目的のみと判断される「駆け込み賃貸」は否認されるリスクあり
  • 空室が続いていると「賃貸割合」が下がる——入居者がいない状態では評価額の減額効果が薄れる
  • 小規模宅地等の特例との兼ね合いを確認する——自宅として使っていた場合に適用できる「小規模宅地等の特例(最大80%減額)」が使えなくなる場合がある
  • 過剰なリフォーム投資は本末転倒——節税効果より改修費用が上回ると意味がない

特に「小規模宅地等の特例」との兼ね合いは複雑で、自宅として使っていた土地に貸家建付地の評価を使うか・使わないかで大きな差が生まれることがあります。必ず税理士に事前相談してから動いてください。

過剰リフォームのリスクについては、こちらも参考にしてください。
空き家活用で使える補助金のリアル——もらえる条件・やってはいけない罠

まず「借りたい人がいるか」世間に聞いてみる

「理屈は分かったけど、うちの古い実家を借りてくれる人なんているんやろか」——そんな不安があるなら、ひとりで悩んで絶望する前に、まずは世間の声を聞いてみてください。

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「ええやん、こんな使い方あったんや」——需要が先に見えれば、自信を持って人に貸す決断ができます。そして「人に貸している事実」が節税の盾になる。

空き家マッチングについては、こちらも参考にしてください。
空き家マッチングとは何か——空き家バンク・不動産会社との違いと選び方

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よくある質問

Q. 空き家を賃貸に出すと、相続税は必ず安くなりますか?

必ずしもそうとは言えません。貸家建付地の評価減は有効ですが、「小規模宅地等の特例」を使える場合はそちらの方が節税効果が大きいケースもあります。個々の状況によって最適な方法が異なるため、必ず税理士に相談してください。

Q. 相続が発生した後でも賃貸に出すと節税効果がありますか?

相続発生後に賃貸に出す場合は、相続時点での評価額がすでに確定しているため、相続税への直接的な節税効果はありません。ただし、相続後に賃貸にすることで次の相続(二次相続)に向けた対策になることがあります。税理士に相談してから判断してください。

Q. 「小規模宅地等の特例」と貸家建付地の評価減は同時に使えますか?

同じ土地に両方を適用することは原則できません。どちらを使うかは土地の評価額・面積・相続税率などによって異なります。小規模宅地等の特例(最大80%減額)の方が効果が大きいケースが多いですが、個々の状況により判断が変わります。必ず税理士に相談してください。

Q. 古い家でも賃貸に出せますか?

出せます。フルリフォームしなくても、現状有姿・DIY可能物件として貸し出す方法があります。相続税対策の観点では家賃の高さよりも「賃貸中という事実を作ること」が重要なので、相場より安くても借り手を見つけることに意味があります。

Q. 空き家を賃貸に出す場合、まず何から始めればいいですか?

まず税理士に「相続税の試算と、賃貸に出した場合の効果」を確認してください。その上で、akimiiで世間の需要を確認し、宅建士・不動産会社に賃貸の条件設定を相談するという順番が最もリスクを小さくできます。過剰なリフォームより先に需要を確認することが大切です。

まとめ——「売るか捨てるか」より先に、「貸す」という盾がある

空き家を相続して「税金が怖い」と焦ってしまうお気持ちは、痛いほどよく分かります。でも、見えない恐怖に煽られて大切な資産をタダ同然で手放すのは、あまりにももったいない。

📌 この記事のまとめ

  • 空き家のまま持つと「自用地」として高い評価額で相続税が計算される
  • 賃貸に出すと「貸家建付地」として評価額が約15〜21%程度下がる効果がある
  • 家賃の高さより「人に貸しているという事実を作ること」が節税の本質
  • 「小規模宅地等の特例」との兼ね合い・相続直前の駆け込み賃貸は注意が必要
  • 具体的な節税効果は個々の状況によるため、必ず税理士に相談すること
  • まずakimiiで世間の需要を確認→需要が見えてから賃貸の具体策を動かす

「売るか、捨てるか」というゼロヒャクで考えるのではなく、「とりあえず誰かに貸して税金対策にする」というグラデーションの選択肢を持っておく。その発想の転換が、心にも家計にも大きな余裕をもたらすと、私は思っています。

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穴澤陸平

穴澤 陸平(あなざわ ろっぺい)

一級建築士 / 宅地建物取引士 / MBA|コトスタイル株式会社・グッドランプ株式会社 代表

コトスタイルとして京都・関西を中心に300件超の店舗開業・空き家活用支援に携わる。建築・不動産・経営の複合的な視点から、空き家の可能性を広げることを専門とする。

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