
📋 この記事でわかること
親が大切にしていた家を相続した。でも自分たちにはすでに生活の拠点があるし、戻る予定もない。「売却して手放した方がすっきりするかな」「でもリフォームして貸せば家賃収入になるかもしれない」「いや、いつか自分たちで使う日が来るかも」——あれこれ調べてはみるものの、結局どうすれば一番損しないのか後悔しないのかがわからず、時間だけが過ぎていく。
こういうご相談、ほんまに多いんです。
正直に言います。迷ったときは、無理に「今すぐ売るか貸すか」を決める必要はありません。決断より先にやるべきことがあります。
一級建築士・宅建士として、コトスタイルで空き家活用の支援に関わってきた立場から、後悔しない決断をするための「順番」をお伝えします。
「売るか貸すか」でフリーズしてしまう、本当の理由
なぜ、相続した空き家を前にして身動きが取れなくなってしまうのか。理由は大きく2つあります。
① 判断材料が少なすぎる
不動産の売買や賃貸経営なんて、普通に生きていれば人生でそう何度も経験しません。「売ると税金がかかりそう」「貸すためには数百万円のリフォームが必要なの?」——ネットで調べても、ポジティブな意見とネガティブな意見が入り乱れていて、どれが自分の実家に当てはまるのかわからない。
正解がわからないから、決断できない。そして「とりあえず置いておこう」という現状維持を選んでしまう。
でも、前回の記事でもお伝えしたとおり、不動産において「何もしない」は現状維持じゃありません。建物は静かに傷み続け、固定資産税だけが毎年消えていく。放置期間が長いほど、選択肢が狭まっていくんです。
② 「絶対に失敗してはいけない」という心のブレーキ
もう一つ厄介なのが、感情のハードルです。親が苦労して建てた、自分も育った思い出の家。単なる「モノ」としてドライに割り切ることは難しい。
「変な業者に騙されて安く手放したくない」「適当に貸してトラブルに巻き込まれたくない」——そういう防衛本能が強く働きます。きょうだいがいる場合は「お前の判断で損したじゃないか」と責められるプレッシャーもある。
親の財産を「絶対に失敗せず、一番いい形で活かさなければならない」。その真面目で優しい責任感が、あなたを苦しめているんです。
📌 「決められない」人の頭の中でよく起きていること
- 選択肢が多すぎて、何を基準に判断すればいいかわからない
- 「失敗してはいけない」という意識が、動くことへのブレーキになっている
- 情報が多すぎて、自分の実家に何が当てはまるのかを絞り込めない
- 家族の意見が揃っておらず、自分だけで決めることへの罪悪感がある
「どうせ売れない・借り手がいない」は思い込みかもしれない
決断できないループから抜け出すために、まず捨ててほしい思い込みがあります。
「こんな古い家、どうせ売れないし借り手もいないだろう」——この決めつけです。
価値を決めるのは所有者じゃなく、市場
あなたが「駅から遠くて不便なボロ家」と思っていても、視点を変えればまったく別の価値が生まれます。
趣味で木工作品を作る人にとっては「周りに家がなくて音を出しても怒られない最高の環境」。静かな場所でアトリエを開きたいクリエイターにとっては「理想の空間」。地域に根ざしたカフェを始めたい若者にとっては「新築テナントでは出せない味わいのある物件」。
価値を決めるのはあなたではなく、市場(世間)です。所有者の目線だけで「売れる・売れない」を判断してしまうのは、非常にもったいない。
空間設計の現場で長年感じてきたことがあります。「誰も使わないと思っていた古い蔵が、アーティストに見せた瞬間に『ここで個展がやりたい』と目が輝く」——そういう瞬間を、何度も見てきました。
京都では「古さ」そのものがブランドになる
特に京都の場合、築年数が古い・和の造りが残っている、というのはむしろ強みになります。
格子・土間・坪庭が残っていれば、リノベーションを前提に購入したい層や、京都らしい空間で店舗を開きたい人から高い需要があります。「古い=安い」ではなく「古い=希少価値」として市場が動くことがある。
まず「どんな人が、どんな目的でこの家を使いたいと思うか」を知ることが、売却価格交渉にも賃貸条件の設定にも、大きく影響するんです。
実家の相場の調べ方については、こちらも参考にしてください。
→ 「うちの実家は売れない」と諦める前に——空き家売却の相場をスマホで調べる方法
決断より先に「テストマーケティング」をやってみる
ビジネスの世界に「テストマーケティング」という考え方があります。本格的に商品を売り出す前に、小さく市場の反応を試してみる手法です。
これを、空き家の活用に持ち込んでみてほしいんです。
大金をつぎ込む前に、需要を確かめる
「この状態で貸し出したら、どんな人が興味を持ってくれるだろう?」——本格的な契約やリフォームに動く前に、リスクゼロで需要を確かめる期間を挟む。
これをやるだけで、決断の質がまったく変わります。
たとえば、「カフェをやりたい人がいるなら、現状のままDIY可能な条件で貸そう」という結論が先に見えていれば、何百万円もかけて水回りをフルリノベーションする必要がなくなります。「シェアハウスにしたい投資家がいるなら、その人に直接売却交渉できる」という可能性も生まれる。
需要が先に見えていれば、無駄なリフォーム代を何百万円も使わずに済むし、売却の際にも「この家にはこういう価値がある」と自信を持って交渉できます。
「いきなり不動産屋」の前に、ワンクッション置く
「じゃあ不動産屋に相談に行こう」とすると、気持ちがまだ固まっていないのに売買の営業をされそうで怖い、という方も多いです。
そのお気持ち、よく分かります。まだどうするか決まっていない段階で、「早く契約しましょう」という方向に話が進むのは、やっぱり怖いですよね。
テストマーケティングは、その「怖さ」を回避するためのワンクッションでもあります。売るか貸すか決める前に、まず世間の声を集める。その結果を持って、業者や専門家に相談する。その順番が、後悔を防ぐ一番確実な方法だと思っています。
📋 後悔しない決断のための順番
- Step 1:「この家にどんな可能性があるか」を世間に問う(テストマーケティング)
- Step 2:届いた提案・需要をもとに方向性を絞る(売却 / 賃貸 / 活用)
- Step 3:相場をポータルサイトで自分でも確認する
- Step 4:複数の業者・専門家に相談し、条件を比較する
- Step 5:家族と合意を取り、具体的な手続きへ進む
世間の声を聞いてから、決めればいい
「でも、どうやって世間の反応を探ればいいの?」——そう思う方も多いと思います。
「売るか貸すか」より先に「誰が使いたいか」を知る
akimiiは、空き家の写真と簡単な情報を匿名でサイトに登録するだけで、「この家でこんなことをやってみたい」というアイデアを持った人たちから直接提案が届くサービスです。
不動産会社に査定を依頼するのとは違い、無料で、名前を明かさずに「この家の可能性」を世間に問うことができます。
「週末だけカフェを開きたい若者」「アトリエを探しているアーティスト」「京都の古民家に住みながら仕事をしたいリモートワーカー」——あなたが想像もしていなかった使い道が寄せられることがあります。
「生の需要」を知ることが、最強の判断材料になる
どんな人が、どんな目的でこの家を使いたいと思っているか。その「生の需要」を知ってから、はじめて次の行動を決めればいいんです。
需要が先に見えれば、「売却か賃貸か」という二択で悩む必要がなくなります。むしろ「この需要に応えるにはどうするのが一番合理的か」という問い方に変わる。その方が、ずっと答えが出やすいんです。
空き家活用の選択肢全体については、こちらも参考にしてください。
→ 空き家の活用方法7選——売る・貸す・マッチング・解体を徹底比較
まず写真を1枚撮ることから始まる
ここまで読んで「なんだか難しそう」と思った方も、安心してください。
テストマーケティングの最初のステップは、実家の写真をスマホで何枚か撮ること。それだけです。
「今週末、実家に行って写真を撮る」だけでいい
外観・玄関・リビング・台所・各部屋・庭。スマホで撮るだけでOKです。撮りながら「こんな古い家、どうなんやろ」と思うかもしれません。でも、その「古さ」を見てどう感じるかは、あなたと市場で全然違うかもしれへん。
akimiiに写真を匿名で登録すれば、その反応が届きます。営業電話もなく、契約を急かされることもありません。
「思いがけないアイデアが来るかも」という気軽な気持ちで試してみてください。そこから届いた声の中に、あなたが一番納得できる「売却」や「賃貸」のヒントが隠れているかもしれへん。
ひとりで眉間にシワを寄せて悩まなくていい
「売るか貸すか」と、ひとりで唸りながら悩む必要はありません。家の未来を世間と一緒に面白がる、くらいの余裕を持ってみてほしいんです。
相続した空き家を前にして、選択肢の多さに立ち止まってしまうのは当然のことです。でも、ひとりで完璧な答えを出そうとしなくていい。まず世間に「うちの実家、どう思う?」と軽く聞いてみる。その一歩が、思わぬ扉を開けることがあります。
空き家マッチングサービスについて詳しくはこちら。
→ 空き家マッチングとは何か——空き家バンク・不動産会社との違いと選び方
売るか貸すか、今すぐ決めなくていい。
まず「世間の反応」を知ることから始めましょう。
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空き家の可能性を、写真で見てみる →よくある質問
まとめ——売るか貸すか、今すぐ決めなくていい
ここまで読んでくれてありがとうございます。
相続した空き家を前にして、選択肢の多さに立ち止まってしまうのは当然のことです。でもひとりで完璧な答えを出そうとする必要はありません。
📌 この記事のまとめ
- フリーズするのは「判断材料がない」「失敗できない」という2つの理由から
- 「どうせ売れない」は所有者の思い込みである可能性が高い。価値を決めるのは市場
- 決断より先に「テストマーケティング」——需要を確かめてから判断する
- 需要が先に見えると、無駄なリフォームをせずに済み、売却交渉でも強くなれる
- akimiiで写真を匿名登録するだけで、世間の需要を知ることができる
- 「今週末に写真を撮る」それだけが、最初の一歩
迷ったら、決断をいったん保留にして、まず世間に「うちの実家、どう思う?」と軽く聞いてみる。そこから届いた思いがけないアイデアの中に、あなたが一番納得できる答えが隠れているかもしれへん、と私は思っています。
「売るか貸すか」より先に、
この家を「誰かが使いたいか」を知ることから。
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穴澤 陸平(あなざわ ろっぺい)
一級建築士 / 宅地建物取引士 / MBA|コトスタイル株式会社・グッドランプ株式会社 代表
コトスタイルとして京都・関西を中心に300件超の店舗開業・空き家活用支援に携わる。建築・不動産・経営の複合的な視点から、空き家の可能性を広げることを専門とする。