
📋 この記事でわかること
6月もいよいよ中旬に差し掛かり、京都・北大路のあたりも本格的な梅雨空が続いています。休日の朝は、いつものように鴨川沿いをランニングして心と身体のリズムを整えます。
先日、広島でサッカーの寮暮らしをしている高1の長男から、久しぶりに「試合で点決めたで!」と連絡がありました。遠くでがんばる息子の姿を想像しながら、「おっしゃ、がんばれるときにがんばるんやで」と一人静かにガッツポーズをした週末です。
今日も事務所に、こんな相談が届きました。
「とりあえず業者に頼んで、壁紙を全部白にして、水回りをピカピカにリフォームしようと思うんです。そうすれば、誰かしら借りてくれますよね?」
古い家を綺麗にする——一見すると一番正しくて絶対に失敗しない王道ルートのように思えますよね。
でも、ちょっと待ってください。この「とりあえず綺麗にする」という考え方こそが、空き家活用で一番やってはいけない最大の罠なんです。
一級建築士・宅建士として、コトスタイルで空き家活用・店舗プロデュースに関わってきた立場から、「とりあえずリフォーム」に潜む失敗の構造と、空間デザインの現場で使われているマーケティング思考をお伝えします。
「とりあえず綺麗に」が引き起こす悲劇——万人受けの末路
「誰にでも好かれるように、無難な白い壁紙と普通のフローリングにしておけば間違いない」
——リフォームを始めようとする多くの方が、こう思い込んでいます。
でも、ちょっと想像してみてください。スーパーに並んでいるお弁当で、「誰にでも嫌われない、特徴のない普通のお弁当」って、一番最後まで売れ残っていたりしませんか?
不動産もまったく同じです。
「誰でもいいから借りてほしい」という思いで作られた無難な家は、結果的に「誰の心にも刺さらない家」になってしまいます。
何百万円もかけてリフォームしたのに、内見に来た人が「ふーん、普通ですね」と言って帰っていく——これが現場で起きている一番悲しいリアルです。
⚠ 「とりあえず綺麗にする」リフォームが失敗する理由
- どんな人にも「まあ、普通ですね」と思われる
- 新築・築浅マンションと同じ土俵で比較され、必ず負ける
- 何百万円もかけたのに差別化できず、値引き競争に巻き込まれる
- ターゲットが不在のまま完成するため、誰に向けてPRすればいいか分からない
「万人受け」を狙うことは、「誰にも刺さらない」ことと同義です。これはマーケティングの世界で何十年も前から言われていることですが、空き家活用の現場では今もこの失敗が繰り返されています。
過剰なリフォーム投資の問題については、こちらも参考にしてください。
→ 空き家を業者に「丸投げ」すると損をする理由——主導権を守る方法
強力なライバル「新築マンション」に埋もれる理由
なぜ無難に綺麗にすると失敗するのか——比較されるライバルが「ピカピカの新築や築浅のマンション」になってしまうからです。
相手の土俵に乗らない——差別化の発想
同じ「綺麗で無難な白い部屋」という土俵に立ってしまったら、どうしたって設備が新しくて駅に近いマンションには勝てません。サッカーで言えば、相手の得意な戦術にわざわざ合わせて、真っ向からフィジカル勝負を挑んでいるようなものです。
万人受けを狙うということは、資金力のある強力なライバルたちがひしめくレッドオーシャンに、自分から飛び込んでいくのと同じです。
古い家・広い家・庭がある家——これらを「弱点」ではなく「誰かにとっての最強の武器」として捉え直す。それが、新築マンションと戦わずに勝つ唯一の方法です。
空間デザインの基本は「誰のための空間か」——ペルソナ設定の力
空間プロデュースの世界では「この空間は誰のためのものか?」を最初に徹底的に考え抜きます。業界の言葉で「ペルソナ設定」と呼んだりもします。
「たった一人の理想の入居者」を強烈にイメージする
「誰でもいい」ではなく「たった一人の理想の入居者」を強烈にイメージするんです。
📋 ペルソナ設定の例——こんなふうに具体的に考える
- 🐕 「大型犬を飼っていて、休日はリビングで一緒にゴロゴロしたい30代の夫婦」
→ 床は傷がつきにくい素材に・庭で犬を遊ばせられる・周辺に公園が近い - 🎨 「多少古くてもいいから、絵の具を思い切り広げて作業できるアトリエを探している若手クリエイター」
→ 壁は入居者にDIYさせる・床はコンクリート打ちっ放し感を活かす - 👨👩👧👦 「子どもが思い切り走り回れる一戸建てに引っ越したいマンション育ちのファミリー」
→ 子どもの音が響かない・庭で水遊びができる・小学校までの距離 - 🎸 「防音環境さえ整えれば、家賃は多少高くてもいいというミュージシャン」
→ 近隣との距離・防音工事の余地・電源容量
ターゲットを絞り込むと「じゃあ、床は傷がつきにくい素材にしよう」「壁紙は思い切って入居者にDIYさせよう」といった、その人にだけ深く刺さる尖ったアイデアが自然と生まれてきます。
「絞り込むことが怖い」という誤解を解く
「ターゲットを絞り込んだら、借り手の母数が減るんじゃないの?」と思うかもしれません。でも逆です。
「誰でも」に向けた家は誰の心にも引っかからない。「あなたのために作りました」と言える家は、そのターゲットに強烈に刺さります。一人の熱狂的なファンを作る方が、千人の「まあ、悪くはないけど」より確実に入居につながるんです。
弱点が「最高の強み」に反転した実例
現場であった実例をお話しします。
築50年を超える古い戸建てを相続した方がいました。普通に考えれば「古くてボロボロ」という致命的な弱点です。
「レトロ好きの若者」というターゲットで逆転した
私たちは万人受けを狙うリフォームを一切やめました。ターゲットを「レトロな雰囲気を愛するビンテージ好きの若者」に絞り込み、あえて古い柱や土壁を残し、照明だけをアンティーク調に変えたんです。
すると、「こういう味のある家を探してました!めっちゃええやん!」と、相場より少し高い家賃で即座に入居が決まりました。
この実例の「逆転のポイント」
- ❌ 万人受け路線:白い壁紙・新しい水回り → 新築マンションに負ける
- ✅ ターゲット絞り込み:古さをそのまま活かす → 競合ゼロのブルーオーシャンへ
- ✅ リフォーム費用:照明交換のみ(数万円)
- ✅ 家賃:相場より少し高く設定できた
- ✅ 入居決定:募集から即決
ターゲットさえ明確になれば、あなたが「弱点」だと思い込んでいた部分が、誰かにとっての「最高の強み」に大化けします。
空き家を古民家・アトリエとして活かす発想については、こちらも参考にしてください。
→ 空き家を「アーティストのアトリエ」として貸し出す魅力——古い家の弱点が最強の武器に変わる逆転発想
リフォーム業者に丸投げする前に——業者は「無難な提案」しかしない
「じゃあ、リフォーム業者さんにターゲットを考えてもらおう」——それは少し危険です。
多くのリフォーム業者さんは「綺麗に工事をすること」のプロであって、「誰にどう貸すか」を設計するマーケティングのプロではありません。だからどうしても「よくある無難な白い壁紙」を提案してきがちです。
業者に「こういう人に貸したい」と言えるかどうかが分岐点
大切な実家の未来を決める主導権を、最初から業者に丸投げしてはいけません。まずあなた自身が「この家、どんな人に住んでほしいかな?」と少しだけ妄想を膨らませてみることが、失敗を防ぐ最大の防具になります。
「30代の子育てファミリーに住んでほしい。だから庭は残して、床はペットや子どもが走り回っても傷がつきにくい素材にしてほしい」
こういう指示を業者に出せる状態で相談するだけで、提案の質はガラリと変わります。
📋 リフォーム業者に相談する前にやること
- Step 1:akimiiで実家の写真を登録し、世間からのアイデアを集める(無料)
- Step 2:届いたアイデアをもとに「どんな人に貸したいか」のイメージを固める
- Step 3:ターゲット像を言語化してから業者に相談する
- Step 4:複数社から見積もりを取り、ターゲット像に合った提案をしてくれる業者を選ぶ
- Step 5:費用対効果(リフォーム費用÷見込み家賃収入)を計算してから決断する
世間の声からターゲットを見つける方法
「そうは言っても、自分でターゲットなんて思いつかないよ……」「やっぱり面倒だから、京都市の空き家バンクにでも登録してしまおうかな」
そんなふうに立ち止まってしまった時は、無理にひとりで悩む必要はありません。高いお金を払ってリフォームする前に、まずは世間の人たちに「うちの家、どんなふうに使いたいですか?」と直接聞いてみるのが一番です。
akimiiで「世間のターゲット」を先に知る
akimiiはスマホから匿名で実家の写真を載せるだけで、「ここをこんな風に使いたい!」という具体的なアイデアが世間から無料で届くサービスです。
「えっ、うちの家ってこんな人たちに需要があったんや」——世間の生の声からターゲットのヒントをもらうことができれば、もうリフォームで迷子になることはありません。しかも無料で試せる。
akimiiで先に需要を確認するメリット
- ✅ リフォームする前に「誰が必要としているか」が分かる
- ✅ ターゲットに合わせた最小限のリフォームで済む(コスト削減)
- ✅ 「DIY自由・現状渡し」という選択肢が浮上することもある(リフォームゼロ)
- ✅ 京都市の空き家バンクに登録するか・民間で動くかの判断材料になる
- ✅ 需要の証拠を持った上で専門家(宅建士・建築士)に相談できる
空き家活用の専門家への相談方法については、こちらも参考にしてください。
→ 不動産屋が教えてくれない「空き家活用」の本当に相談すべき専門家
リフォームより先に、「誰が必要としているか」を世間に問うてみませんか。
それが、失敗しない空き家活用の最初の一歩です。
akimiiでは写真を登録するだけで活用の提案が届きます。匿名OK・営業電話なし・完全無料。
空き家の可能性を、写真で見てみる →よくある質問
まとめ——「誰かに刺さる家」が、勝てる空き家活用の出発点
「とりあえず綺麗にすれば、誰か借りるでしょ」——その思い込みのまま見切り発車でリフォームを進めるのは今日で終わりにしませんか。
📌 この記事のまとめ
- 「誰でもいい」で作られた無難な家は、誰の心にも刺さらない
- 万人受けを狙うと新築マンションというレッドオーシャンで戦うことになる
- 「たった一人の理想の入居者」を強烈にイメージすることが空間づくりの出発点
- ターゲットが決まれば、「古さ」「広さ」「庭」が最強の武器に変わる
- リフォーム業者は「工事のプロ」であって「マーケティングのプロ」ではない——丸投げ禁止
- akimiiで世間の需要を確認→ターゲット像を固める→業者に相談→最小限のリフォームという順番で動く
まずは今週末、実家の写真をスマホで何枚か撮ってみてください。その写真を使って世間のアイデアを集め、「うちの家を必要としているのは、どんな人だろう?」と少しだけ面白がってみる。その小さな一歩が、新築マンションにも負けない、あなたのご実家だけのオンリーワンの価値を引き出す確実なスタートラインになるはずです。
リフォームより先に、世間の声を聞く。
それが失敗しない空き家活用の第一歩です。
akimiiは写真を登録するだけで活用の提案が届くサービスです。匿名OK・営業電話なし・完全無料。
無料で空き家を登録してみる →
穴澤 陸平(あなざわ ろっぺい)
一級建築士 / 宅地建物取引士 / MBA|コトスタイル株式会社・株式会社グッドランプ 代表
コトスタイルとして京都・関西を中心に300件超の店舗開業・空き家活用支援に携わる。建築・不動産・経営の複合的な視点から、空き家の可能性を広げることを専門とする。